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雪月花
1、11月18日(月曜日)【奇術師、聖凪登場】
キーンコーンカーンコーン―――――

終業を告げるチャイムが、静かな校内に響き渡る。

すると、さっきまで全員が口を閉ざしていた教室内には、石化が解けたかの様に歓喜の声がちらほらと上がり始めた。

「それじゃ、各列の一番後ろの席の奴ら、後ろから解答用紙回収して俺の所まで持って来い」
と、教壇に立つ担任が気だるそうに指示を出す。
しかし、その言葉からは確かに威厳が感じられ、まるで担任が教師であるかの様に思わせてくれる。

おっと、品格も風格も皆無だけど奴は教師なんだった。


「シノブ、回収するから渡して」
たった今指示を受けた、一番後ろの席に座っていた六条れいんは、俺の元に解答用紙を回収しにやって来る。
「…」
れいんが欲する、否、担任が欲するソレを、俺はぶっきらぼうに無言で手渡した。

冷や汗が頬を伝う。

「忍っ!どう、判った?」
と、突然にも俺の後ろの席に座る犬神咲羅が身を乗り出して問うて来るが、俺は答えない。

答えず、ただ机の一点だけを見つめていた。

冷や汗が背中を濡らしているのが判る。
同時に、俺の顔が青ざめているのも。

「よぅし。それじゃお前ら、ちゃんと次のテストの準備しとけよ?
さて、俺は職員室で他の先生とお茶でも飲みながら、今年の学年最下位の奴の予想でもするかな」
用紙を全て回収し終えた担任は、それをまとめながら教師にあるまじき事を言った。

そんな聞き逃せない事を言われた生徒達は、
「ふざけるな!」だの、
「教師は気楽で良いよな!」だの、
「テスト勉強のせいで今月バイト代少なくなるじゃない!」だの、
「F○CK!」だの、
皆が皆、各々に反応を示してる。
誰かは知らないが、消しゴムを担任目掛けて投げる奴まで現れる始末だ。


「いいか、お前ら。何百と居る生徒の答案を全部採点する教師だってダルいんだ。
自分だけが辛い、被害者だなんて間違っても思うんじゃないぞ?
俺達教師を恨むな。恨むならテストなんてクソ面倒な風習を作った昔の奴らを恨め。
テストを恨め!学校を恨め!
テストなんて悪習だ!
お前らにとっても、俺達教師にとってもだ!
だから俺は何も悪くない、断じて!
ってか誰だよ、消しゴム投げた奴?
返さないぞ?絶対返さないぞ?
これなきゃ次のテスト消しゴム無しで臨む事になるんじゃね?
ざまぁみろ」
そんな捨て台詞を吐き、担任は消しゴム片手に意気揚々と教室を出ていく。

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あきゅろす。
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