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雪月花
14
人並み外れた力を持つ希種、浅葱。
吸血鬼の様な奇病を持った人間は、人間同士の輪には入れない。
薫の辿り着いた結論は、言ってしまえば隔離。
「あぁ…覚悟は出来てる……」
「いいのですね」
無言で頷く。
頷いた時、律義に正座したまま俺を見上げる友真と目があった。
「これからよろしくな、橘さん」
「あ、はい。よろしくお願いします」
友真のお辞儀はペコリと、茶道の時のように深々と。本当に良く出来た娘である。

「もうすぐ葉月さんも来るでしょうから、そうしたら黒霧の家から荷物を持って来てください。大切な物や必要な物、いろいろありますでしょうから」
「…判った」
「細かい事も追々、決めていきましょう」
言って薫は席につき、夕食を食べ始めた。
俺も座り、気を取り直して一品ずつ味を吟味しながら飲み込んで行く。やはり友真の料理は文句なしだった。
「……」
そんな中、チラッと薫に目を向ける。
薫のたたずまいには何故か威圧されてしまう。
六条の時もそうだった。
友真からはそれが感じられない。
これが希種と亜種の違いなのか?
俺には何がなんなのか、まだ判らない。
カチャカチャと言う食器と箸のぶつかり合う音が、暫くの間居間に響き渡った。

葉月氏がここに到着したとほぼ同時に、浅葱家の夕食は一段落した。

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あきゅろす。
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