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雪月花
11
純粋無垢な笑顔で微笑む少女。やばい。涙が出そうだ。

薫よ、こんなに自分のことを思ってくれる友達なんて、生涯で一人いるかいないかだぞ。俺にはこんな友達居なかった。
この涙はそんな悲しみの涙に違いない。絶対に妬みの涙ではないと言い切りたい。
「じゃあ今日は頑張っちゃいますよ♪忍さんも居ますし、張り切っちゃいます」
そう言って友真はテテテッ、と台所の方へ駆けて行った。

それからと言うもの、友真は休憩なしに手を動かした。居間にはタンタンと言う小気味良い包丁の生み出すリズムが聞こえて来る。
「もうちょっとで出来ますからねぇ♪」
「あいよ〜」

………

何だ、この新婚夫婦みたいな会話は。
なんだか気まずい俺は適当にテレビの電源を入れていた。
そして何チャンにしようかと迷っていると、
「この時間は12チャンが面白いですよ♪」
台所から声がした。
何なのだあの娘は?確かに良い子だが、余計なまでに人に干渉し過ぎだ。
等と心の中で考えつつも、俺は言われた通りチャンネルを12チャンに合わせる。

「……」
何だこれは。
ハムスターが群れで行動を――――
終いには喋り出した!?
しかも人間以上の結束力!?
飼い主と思われる人間の目を見事に欺き、さも外出していなかったかのように平然としてやがる。最近のハムスターはこんななのか。
「そのハム三郎が可愛くて可愛くて♪キーホルダーとかもあるんですよ?」
「そうなのか…」
結論としてはこうだ。
驚かされたがつまらん。まぁ中学生じゃしょうがないか。

中学生…?
疑問が生まれた。
「なぁ、橘さん…でいいのか?橘さんは中学何年生なんだ?」
すぐに返事は返ってきた。
「中3ですよぉ」
おいおい、受験真っ直中じゃないか。いくら友達のタメとは言え、自分の人生を棒に振る必要はないだろう。
「私、高校には行かないつもりなんです」
「まじか?」
「はい。家庭の事情なんですけどね…」
あまり立ち入らない方が良さそうな話だな…

「あ、そろそろ出来るので薫呼んできてくれますか?」
「んぁ?構わんよ」
とりあえずテレビを消し、薫を呼びに二階へ向かう。
いやはや、仕事の早い娘だ。将来立派な嫁さんになれるぞ?
夫にとって都合の良い嫁さんにならないか心配だがな。

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あきゅろす。
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