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雪月花

希種? あの六条が?
しかしそれを否定出来る材料がない。むしろ肯定する方が簡単だ。

あの人並み外れた腕力。
跳躍力。
どこから出たのか判らない謎の刀。

一般人からすれば有り得ないソレらから考えれば、あいつが希種だったと言っても十分頷ける。
「…その人は?」
沈黙を破ったのは薫だった。
「六条は死んだ…
でも、あいつはお前の言う悪い希種ではなかった…と思う」
「…」
「あいつは吸血鬼から俺を助けてくれたんだぜ?
多分マンションの屋上に逃げたのも、他の被害者を出さないようにするタメだったのかも知れないし…」

自分で言って驚いた。
何故俺が六条を庇っている?
敵だった奴だぞ?ほんの数分の間は味方だったが…

「…」
薫は答えない。深く唸り、何かを考えるように…
「薫…?」
俺が言葉を発するのと同時に、薫は席を立った。
そして俺の方を振り向くと、
「少し調子に乗って話過ぎたみたいです…
気分が優れないので少し寝ますね? 話の続きはまた」
「あ、ああ…」
「これだけは言わせて下さい。
黒霧の家が襲われたのは偶然ではありません。必然です。
吸血鬼はより強い力を得るため、自分より強い吸血鬼を狙ってやってくる。そのためには他人をも殺す、手段を選ばない種族です。
あなたはここへ戻ってくる運命にあった」
「…」
「ここへ戻ってくるかどうか、ゆっくりお考え下さい。
ここなら不自由なく暮らせます。あなたの居心地の良い場所になるよう、私も最善の努力を尽くします。
聞きたい事があればいつでも私の所に来て下さいね?
今は食べ物もありませんが、夕方には友真が来てくれると思いますから」
「ユ…マ…?」
途切れ途切れの言葉で問うと薫はニッコリと微笑み、
「私のお友達です♪」
そう言って居間を去って行った。

希種…
そんなモノが存在するなんて今まで知りもしなかった。
当たり障りのない人生を歩んで来たのだから当たり前か…
その希種が自分でもある?
全く判らない。
俺の中には普通の人間には無い力が宿っている…
未だに信じられない。
完全に話の途中で終わってしまったが、まだまだ薫には聞くべき事が沢山ありそうだ。

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