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雪月花

「はい。正確には、吸血鬼の力を持った人間と言うべきですね。
しかし、今のあなたの力がどの様な力かは判りませんが」
はぃ?
「同じ血統であっても一人一人、備わる力は違います。

浅葱の唯一の共通点はさっき言った通り、吸血鬼と同化する。
それだけです」
「じゃあ、お前の力は……?」
「私ですか?ふふふ」
薫はカタカタと乾いた笑い声をあげ、俺の顔のすぐ目の前まで身を乗り出し、顔を近付けた。そして、
「なんだと思います?」
聞かなければ良かったと後悔した。何故ならば、
薫の表情があの日、あの公園でみた不気味な表情をしていたのだから。
背筋に電流のような悪寒が走る。息が出来ない。
「あはははははははははははははははははははははは」
雪のように白い肌を震わせ、薫は壊れた機械の様に思いきり笑いだす。
「な、なんだよ…」
「―――私にも判りません♪」
「…」
パッと、一瞬で表情をさっきまでのモノに戻し、薫は淡々と言って退けた。そして、元の位置に座り直すと、
「唯一判る事は、私は浅葱の中でも一番血が濃い…」
一番…血が濃い?
「はい。私の場合は元々体も軟弱です。希種を倒す程の体力も持ち合わせていません。
力だって今まで一度も使った事がない。だけど、私の発作は異常なんですよ。
下手をすれば毎日のように発作に悩まされる…」
さっきから発作という単語が飛び交っているが、俺には判らない。それはどんなモノなのか…
「あなたは、発作になった事はありませんか?」
俺の思考を呼んだかのように、タイミングの良い質問だった。
「多分…ない…」
「吐き気や目眩、人の血が欲しくなる。目の前が真っ赤になる。ありませんか?」
吐き気。目眩。目の前が真っ赤――――?
人の血が欲しくなった事はないが、その症状って……
「……生徒会室…」
「…?」
「この間…お前に会った日。あの日、俺は文化祭の用事で学校に行ったんだ…
人の血が欲しくなるってのはなかったが、目眩とかは…」
「…あったんですね」
頷くしかなかった。
「…あれが…その発作だってのか?
俺はその時、まだお前にも会っていなかった。六条にも…
もしかしたら自分は吸血鬼かも、って思い込ませる要素はまだ何も…」
「六条…?」
薫が顔をしかめて問うた。
「ああ、転校生の名前だ…
だけど…」
「その人も吸血鬼がどうの…と?」
「俺を吸血鬼だって…」
薫の表情が曇って行く。そして本当に小さな声で、
「希種…」
呟いた。

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