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雪月花

「私達と同じような力を持ったモノ。それを希少種、“希種”と呼んでいます」
「き…しゅ…?」
「はい。この世に生まれ落ちた時から何らかの力を持つ者。何らかの不確定要素により力を開花させる者。過程は様々ですが、私達はそう呼んでいます。
故に浅葱は前者となる訳ですけど」
そこまで言うと、薫は満足げに大きく頷いた。今の話に満足できる箇所も、自慢気になれる箇所もありやしない。
「…その力ってのは何なんだ?」
「様々です。浅葱の場合は、鬼と同化する力」
「同化…?」
「鬼と同化する事により、一時的に鬼の力を得る事が出来るのです。
私達が同化するその鬼こそが

“吸血鬼”

な訳ですけど。
私達の発作はその力の代償と言っていいでしょう。
あ、あまり力を酷使しすぎると体を丸ごと、鬼に乗っとられる可能性もありますから要注意です。
どう説明しましょう…
私達はその力で希種を退治して来ました、かな?
あ、どうぞ」
いつの間にか飲み干していた俺の湯飲みに、薫はお茶を継ぎ足した。しかもあやふやな回答を残して。

「他の希種を退治?
別にそんな事しなくても―――」
「浅葱の家は元々、魔を滅ぼすタメの家系でした。
しかしいつしか魔は滅んだ。
言い伝えでは死神の一族によって…と言われていますが。
70年程前、その一族も内乱により滅んだと聞いています。
それからはパッタリと、嘘のように魔族は消えた…
そうして狩る相手のいなくなった浅葱の標的は―――」

希種に移ったと言う訳か。
「そうです。しかし私達は全ての希種を滅する訳じゃない」
「……」
「邪心に心を奪われし者。私利私欲に力を行使する者。秩序を乱す者。それだけです」
何やら良くわからんが、そんな悪者だらけなのか、この世は?
「希種は普通の人間には無い力を持っているのです。
あ、普通の人間を私達は“亜種”と呼んでいますけど♪

…最初は力に優越感を覚えるでしょう。しかし、いつしか邪心に心を奪われてしまっても仕方ありません。
他人より優れた力を求める。それが人間と言う生き物の性なのですから…」
「お前も、その一人だってのか」
長話に疲れ、俺は体勢を崩した。
「人間なら誰でもそうです。しかし私達は絶対にそのような過ちは犯さない」
「まぁ待て。それじゃぁ俺が吸血鬼ってのも事実で、それだけじゃ飽きたらず、おまけに変な力も備わっちまってるってことだ?」

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