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雪月花

「…返事はまた明日聞くとするよ。詳しい話も、また明日にでも…ね?」
葉月氏が言った。そして答えない俺を諭すように続ける。
「とにかく疲れただろう? 今日はゆっくり休んで気持ちを落ち着くといい」
「あ、布団の用意は出来てます」
薫も葉月氏に続いた。
「今はあなたの部屋がないので、前の父の部屋になってしまいますけど…」
俺は答えない。ゆっくり休めるハズがないだろう。
今日一日でいろいろな事があり過ぎた。大切な人が死に、俺も人の形をしたモノを殺し…。訳が判らない。
「薫くんもそろそろ休みなさい。体調に響く」
「…はい」
俺を余所に、葉月氏と薫は会話を進めていく。
依然として動かない俺に薫は、
「父の部屋は二階の奥の部屋になります。落ち着いたらそちらへ…。お茶、淹れときますね」
それだけ告げて居間を去った。俺は注がれたお茶を無気力な目で眺める。
これからの事なんて考えられない。
どうすればいいのかも判らない。
唯一相談出来そうだった、今回の当事者である六条ももういない。
俺はいつの間にか、居間で泥のような眠りについていた。

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