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雪月花

決定。この人は神様でもなんでもない。ただの嘘つき野郎だ。良い大人が自分の事を神様だとか言ってるんじゃねぇよ、みっともない。
「別に信じる信じないは君の勝手だけどね」
「えふんっ…あなたにとっても、これは悪い条件ではないハズです」
と、突然おかっぱ少女(自称俺の妹)は咳払いの後、完全に脱線事故を起こした話を元の軌道へと修正した。ナイスだと褒めてやりたいね。このままだったら俺と葉月氏の討論だけで時間が過ぎていただろうだからな。
ひとまず例の話に戻る前に、俺は喉を潤すため三杯目となるお茶を要求した。

「それでは――――」
「まぁ待て」
少女が語りだした所で俺はソレを制した。気にかかる事があったからだ。
「確かに俺にとっては悪くない話だよ。しかし一つ大きな問題があるんだ。お前は俺の妹だと言ったな?」
こくりと、黙って少女は頷く。
「実はな、俺は記憶喪失なんだ。だからお前が本当に俺の妹なのかも判らん。大体、名前はなんだったっけか?」
「浅葱薫です。それについてですが問題ありません。こちらの葉月さんは現役の医師です。あなたが記憶を失っていようが、DNA鑑定をしてもらえばすぐに判る事でしょう」
「まじでか」
「まじです」
満ち足りた顔で頷く薫(本当に妹らしいがまだ信じられん)。
例えDNA鑑定の結果上兄妹だと判明しても、俺はどうする? 昔の記憶がない以上なかなかに居心地が悪いのではないか?
「いやぁ、こう見えても医者なんだよねぇ。はっはっはっ」
と、薫(本当に妹らしいがまだ信じられん)に素姓を明かされ、俺の心境など知りもせずに照れながら笑う葉月氏。
照れるな、気色悪い。
しかし医者か。あんたの正体は医者だったのか。それで神様って、ブラッ○ジャックかこの野郎。妙なこじつけをするな。
よくよく見れば、葉月氏は以前薫(略)と公園で遭遇した時に、突然現れて嫌がる薫(略)を拉致して行った人間に良く似ている。いや、あの時の人その物だ。
むしろあの時の人より似ているじゃないか(?)
そうか、彼女と葉月氏は患者と医者と言う関係だったのか。納得した。
「どうでしょうか」
「どうでしょうかと言われてもな。黒霧の家はどうなる? 俺からすればあの家は思い出がいっぱいなんだが」
心からの意見だった。事故の後、記憶喪失になってからずっと生活してきた家なのだ。


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あきゅろす。
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