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雪月花

「…なるほどな」
一方の俺はあぐらをかいたまま頷き、一度完全日本家屋という慣れ親しくない室内を見回した。そして問うた。
「別に構わんのだがな。マイハートはそう即座に新しい事を受け入れられる程簡単な作りじゃないんだ。あんな事の後だし、精神的にもボロボロな訳よ。俺の傷ついた心のケアはしてくれるのか?こんな状態じゃ新しい環境に順応出来やしねぇ」
「それは…もう過ぎてしまったことです…」
少女は身を小さくしながら答えた。まるで自分の事のように。
「いや、お前じゃねぇよ。そっちの神様に言ってんだ。この話を発案したのはあんただろ?」
俺は未だに笑みを浮かべたまま座っている、葉月氏を睨み付ける。
「えっ、僕かい?」
自分だとは思わなかったのか、自称神様は目を丸くした。
「そう、あんた神様なんだろ?発案者なんだろ? あんな事の後のこの話だ。俺の心をリフレッシュさせるくらいのことはできるだろよ?」
「そりゃぁ出来るけど…」
神様は困ったようにポリポリと鼻の頭を掻く。それでも笑顔のままってのは、本当に生まれつきなのかね。
とりあえず出来ると聞いた俺は極上の悪人的笑みを浮かべ、
「なら俺をこの世で一番偉い人間にしろ。更にはおまけとして、俺に絶対服従を誓う舎弟を一億人用意しろ。そうだなぁ? 後こんなボロっちぃ家じゃなくて、もっと大きくて綺麗な豪邸にでもしてくれや。頼むぜ神様」
不可能な事だとは判ってる。だが俺の心はそれでも癒えないくらいに深い傷を負ってるんだよ!ちくしょう!
「全部私利私欲な願いじゃないか。そういうのは禁忌だからなぁ…」
と、神様。
「あぁん?神様なんだろ? だったらそのキンキとか言うのは気にしないで願いを叶えてくれよ〜」
と、小馬鹿にしながら俺。今の俺はタバコというオプションが付いていたら物凄く様になるだろう。
「禁忌を犯すと僕の力が剥奪されてしまうんだよねぇ…」
「神様だろ?神様が誰に力を剥奪されるってんだ。一番偉い存在なら、そんなの気になられねぇじゃねぇか」
「そうもいかないんだよね…魔術の使用は神でも関係無しに監視されてるから」
と、それが葉月氏の言い分である。
「誰によ?」
「おかしなことに、僕にも判らないんだ。これが」

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あきゅろす。
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