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雪月花
1、10月29日【序】
あらすじとしては先ほどの通りである。
俺は誰の導きか現実離れした出来ごとの当事者となり、それによってどん底まで落とされたテンションの中、自称神様こと葉月前氏と遭遇。その葉月氏に連れられて今は謎の日本家屋に居るって訳である。
時刻は丁度午前0時を回った所だ。
「粗茶ですが」
家内でかしこまりながら俺にお茶を進めるのは、いつぞや公園で話した和服の女の子であった。葉月氏とはどう言った関係なのかは後にしよう。
「さて、これからの事だけど」
と、葉月氏。今もだが、車の中からもずっとニコニコ笑顔を振る舞う神様。事態を知ってるとの事だが、何がそんなに楽しい。この無礼者め。
「失礼、この顔は生まれつきでね」
「…そうですかぃ」
俺は適当に返事をすると、ほとんど熱湯に近いお茶を啜りながら冷えた体を温めた。正直ちょっと薄い。
「とりあえず本題に入らせていただきます」
少女は俺の気が少し落ち着いたのを確認すると、律義にも正座をして口を開いた。そしておかっぱ頭を揺らしながら軽く会釈し、
「突然で驚くこともたくさんでしょうが、どうかお聞きください」
「ふむ」
「今回のお話は聞いています。黒霧家への強襲から何から何まで」
「…ああ」
嫌なことを思い出した俺はお茶を飲み干し、とりあえずおかわりを要求した。自棄酒ならぬ自棄茶である。
「でわ改めまして、三つ、あなたには前もって言っておきたいことがあります」
「三つだけな?増やすなよ」
俺は捻くれたまま、二杯目のお茶を啜る。ズズッとな。
「まず一つ目。黒霧忍さん。あなたは私の兄です」
「ぶふっ!」
さすがに吹いたね。突然何を言い出しやがるんだ、この娘は。
脳味噌腐ってるんじゃねぇか?
「詳しくは後で。そして二つ目。あなたは吸血鬼です」
またか。また吸血鬼か。もはや驚きの感情も芽生えない。
今年のブームは吸血鬼で決定だな。
「これも詳しくは後で。そして三つ目。あなたにはここに住んでいただきたいのです」
「は?」
思わず湯飲みから口を放し聞き返した。すると少女はさも当然のように、
「兄弟で同じ家に住むのは当たり前のことです。身寄りが無くなった以上、あなたにはここに帰ってきていただきたいのです」
そう言った。


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