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雪月花

咲羅に続いて部屋に入ると、彼女は俺の目の前で電光石火の如く速さで俺の布団に潜り込んだ。
そのまま静かに、その身を丸くする。

「お前…一体何しに来たんだよ…?」
「わかんないかなぁ…この冷たい雨の中、私は忍の事が心配だったから、頑張ってここまで来た訳ですよ?
こんなに冷えきった、か弱き乙女の体を暖めるには毛布しか無いでしょう。
それとも忍の部屋にストーブでもあるのかなぁ?」
なんて、嫌味ったらしく言いながら咲羅は俺の部屋を見回した。
生憎、この部屋にはストーブなんて気の利いた暖房機具は無い。
俺は少しでも彼女から距離を置こうと、少し離れた床に座り込む。

そんな俺を見ると、犬神咲羅は人差し指を立てて尋ねて来た。
「ときに忍くん。今日は何で、学校を休んだのですか?」
「別に…ちょっとダルかっただけだよ」
「また、変な夢を見たの?」
言って、咲羅は壁に寄り掛かる。
「あれ、お前にそのコト話したっけか?どうも最近物忘れが酷くてよ…」
確かに、咲羅に夢のコトを話した覚えは全く無い。

俺が話したのは―――――
「神童くんから聞いたんだよ。
忍はその夢を見た日は、毎日起きないでずっと布団の中なんだと、って。
あんまり詳しくは聞かなかったけどね」
「やっぱりあいつか…」
脳裏に、神堂一のその話をしている時の姿が鮮明に、手に取るように浮かんだ。

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