雪月花 27 「はぁ…」 「まだ見たりしてるのかい?内容に変化とかは?」 「最近はあんま見なくなりましたね。 変化もないっすよ?過程こそ違えど、結果的には頭握り潰される所まで。毎回その寸前で目が覚める感じです」 俺の返答に、葉月さんは過程は違うのか…と呟いた。 「何か情報は得られたりしないかな?」 「夢からですか?」 「そう。例えば携帯電話で日付を見るとか」 「そういうのはちょっと… 何て言うか、予め用意された映像として見せられてるだけみたいなんすよね。夢なのにこれっぽっちも俺の意思なんて反映されないし…」 「うぅむ…」 葉月さんは眉根を寄せた。 その時、コンコンと何者かにドアをノックされた。 まぁ何者かと言うまでもなく、 「先生。患者さんが見えてます」 看護師さんである。 「あぁ、わかった。それじゃ忍くん、今日の所はこの辺で。 とりあえず夢の件は僕の方でももう少し調べてみるよ。引っかかる事もあるしね」 言って、葉月さんは白衣のシワを直しながら立ち上がり、看護師さんから次の患者のカルテを受け取った。 そして思い出したかのように俺へと振り返り、 「君も願い事の方、ちゃんと考え直しといてくれよ?」 眼鏡を怪しく光らせて見せる。 「わ、わかってますって!!」 「それじゃあ。帰り道気を付けて」 待合室へと追いやられた俺は、暫く呆然と立ち尽くした。 くそぅ…あれだって十分マトモな願い事じゃねーか!? 何て改めて本人を前に言えるワケもなく、俺は肩を落としながら帰路へとついたのであった。 [前へ][次へ] [戻る] |