雪月花 23 「それは春と夏だけね」 と、れいんは俺の記憶を一刀両断した。 どういう事だ。 俺は訝しげな顔をしながられいんの元へと駆け寄る。 「確かにシノブの記憶は正しい。5月から10月は夜21時までとなってる。でも今の時期、11月から4月は――――」 「18時までだと!?」 れいんの指さす案内板を見て驚愕したね。 てっきり一年中21時までやってるもんだと思ってたぜ。 「吸血鬼はね、シノブ。その波長を一番強く発するのは21時から26時くらいだと言われてる。 シノブみたいに四六時中波長を出してる例外も中には居るけど、現に私もその時間が一番感じられる」 れいんは案内板を見ながら淡々と喋り出した。 「これでハッキリしたわね。 この公園が開放されているのが18時までだと言うのなら」 「ターゲットは…ここの利用客じゃない?」 「ここが相手のお気に入りの狩場と言っても良いかもしれないわね」 目付きを鋭くさせながられいんは地面を蹴り、軽やかに街灯の上へと飛び移った。 そのまま街灯の上からこのだだっ広い園内を一望する。 俺は街灯の上のれいんを見上げながら、 「って事は、ここで俺達が待ち伏せしてれば…」 「えぇ。閉館した後、禍々しい波長を撒き散らしながらターゲットはやって来る。 悪意を引っ提げて…ね」 [前へ][次へ] [戻る] |