雪月花
15
「良い事を考え付いた」
本をパタンと閉じながら、れいんが立ち上がる。
って事はロクな事じゃねーな。
れいんは薫の元へと歩み寄ると、ポケットの中からおもむろに何かを取り出し、
「カオル、ちょっとごめんね」
薫が火傷したと思われる左目に、何とも手際よく
眼帯
を施した。
「うん。イイ」
言って、れいんは満足そうに頷いた。
「いや何が?」
「An○therの鳴ちゃんみたいで似合ってる。抱き締めたいくらい。萌えるわ」
「……」
「ダメよ!」
と、ツッコミの言葉に詰まって立ち尽くすだけの俺の傍らで、すかさず凪が声を荒げた。
そのまま今にも抱き付きそうなれいんを薫からひっぺがし、腰を下ろす。
「あんまり色んな所からネタをパクってるとお叱りが来るわ!」
俺の代弁をしながられいんがつけた眼帯を豪快に剥ぎ取り、当たり障りのなさそうな別のモノに変えた。
「せめて黒とか、色くらい変えないと」
フゥ…と、一仕事した的な顔をしながら立ち上がった凪の脇に横たわる薫の目には…
「どこの独眼竜だよぉおおおお!!
ただ白い眼帯から黒い眼帯に変わっただけだろうが!」
かの伊達政宗を彷彿とさせるかのような、漆黒の眼帯が付けられていた。
「まんまよりマシでしょうよ」
「もうおかしな方に行っちゃってんじゃねーか!何がしたいのか全然わからねぇよ!」
「てへぺろ☆」
「てへぺろ?下手くそなウインクしやがって、ちっとも可愛くねぇんだよ!!」
「あの…私にもちょっとだけボケさせてください♪」
何かを思い付きやがったのか、ソワソワしながらユマッペまで乱入してくる始末だ。もう勘弁してくれよ。
「何でユマッペまで?収集つかなくなるからヤメレ!」
てか薫も薫だよ!何でされるがまま!?
美容院でもそこまで身を委ねないよ!?もう少し抵抗しろよ!
「ボケさせてください!」
「やかましい!」
「私はやっぱり白の方が萌えると思う」
「やかましい!!」
「てへぺろ☆」
「可愛くねぇって言ってんだろ!!」
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