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雪月花
12
「悩みな…まぁ、ある事にはあるんだけど…」
そこまで言って、先輩は表情を曇らせた。
が、
「とても人に言えるような悩みじゃねぇんだ。心配してくれてありがとうな」
すぐに笑顔を作って見せた。
「…?」
何だ、凡人には理解出来ない悩みだって事か?


と、その時―――――

ブーーッ、ブーーッ…と、俺のポケットの中で携帯電話が振動した。
俺は何かとソイツを取り出す。

携帯の画面には家からの着信が表示されていた。

「何だ電話か?彼女か?彼女なのか?」
なんて、察した先輩が冗談混じりに問うて来るが、実際家からの電話なんて珍しい。
何かあったのだろうか。

「いや、家からっすね。ちょっと出ても良いですか?」
「かまわんぜ」
「サーセン、すぐ済ませるんで」

先輩の了承も得た事だし、俺は心置きなく通話ボタンを押した。
「もしもし?」
『もしもし!し、忍さんですか!?』
電話の相手はユマッペだった。
しかし受話器越しに聞くその声は、普段の彼女のモノとは思えない程に酷く慌てていて、鈍感な俺でも直ぐに何かあったのだと理解出来る。
「どうしたユマッペ!?何かあったのか!?」

『そ…それが…ルーが足りないんです!』
「…ん?」
『でででですから、シチューのルーが足りないんです!!
私とした事が残っていたルーの数をちゃんと把握出来てなくて…にんじんやじゃがいもはちゃんとあるですよ!?
こ、これは私のミスです!!私がもっとしっかりしていれ…あ』
無駄に取り乱したユマッペが素頓狂な声を上げたかと思うと次の瞬間には、
『もしもし、忍くん?そう言うワケなのよ。
だから帰りにスーパーにでも寄って、ルー買ってきてくれない?
れいんがお腹空いてグズりだしてもしょうがないから、なるべく早めによろしくね?』
冷静な凪の声に変わった。

「…」
『もしもし聞いてる?』
「…聞いてるよ。心配して損したわ」
何かと思えば。と、俺も溜め息混じりに言ってやった。

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