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雪月花


俺が氷室衛太と言う男と知り合ったのは、俺が黒霧の家に引き取られた中学一年生の夏のある日の事だった。

あの日、俺は神童と遊びに行く約束をしていて自転車を漕いでいた。
ガキだった俺は遊びに行くのが楽しみで、そりゃもうスピードを出しまくっていたのだ。
そしたら案の定、でっかい石につまづいてバランスを崩し、俺はチャリから放り出されてしまった。
今思えば危ない運転だったと反省するね。
未だにながら運転をしてしまうとあっちゃ、あれから何一つ変わってないと言われてしまっても仕方がない。

それでだ、放り出された俺は奇跡的に無傷だったものの、倒れた拍子にチャリのチェーンは外れてしまっていた。
まだ人生経験も浅いケツの青いひよっ子だった俺は、当然チャリのチェーンが外れた時の対処法もわからず途方に暮れる事しか出来なかった。
チャリを押して行くワケにも行かない。
自分で直すことも出来ない。
待ち合わせの時間は刻々と迫っていると言うのに――――

そんな時、声をかけてくれたのがたまたま通りかかった氷室衛太だったのだ。

彼は俺と同じ中学に通う三年生。俺より2つ年上の先輩だった。

さすがと言うか何と言うか、氷室先輩はチャリをあっさり直してくれた。
直ったチャリを見て大騒ぎして喜んだのを覚えている。

それから数日後だろうか。
俺が出掛けようとした時、斜向かいの家から出てきた氷室先輩と鉢合わせたのは。

まさかこんな近所に住んでいたなんて知らず、ただただ驚いた。

氷室先輩とつるむようになったのはそれからだ。
神童を交えて三人でも良く遊んだ。
悪い事もしたし、危ない事もした。
ロクな事をしなかったが、今じゃ良い思い出である。

年上の氷室先輩は面倒見も良く、俺と神童からすれば兄貴が出来たみたいだったな。
神童なんかは馴れ馴れしくも衛ちゃんって呼んで、よくなついてた。
近所のおばちゃん連中には悪ガキ三人組なんても呼ばれてたっけ。


しかし氷室先輩が高校に入ってからは、すっかり疎遠になってしまっていたんだが…

今日俺達はどういう巡り合わせか知らないが再会した。


「いやぁ、ホント懐かしいな。この公園で良く遊んだ」
本屋から場所を移した俺達は、昔よく遊んだ公園に来ていた。
先輩はベンチに腰掛け、思い出に浸りながら言った。

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あきゅろす。
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