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雪月花

小一時間は時間を潰しただろうか。
読み終えた雑誌を棚に戻し、また別の雑誌を手にとろうと手を伸ばす。

が――――、
「あ…」
雑誌に触れる前に誰かの手に触れ、俺の手は反射的に引っ込んだ。
しかし俺の脳はフル回転し、これはアレじゃないかと予感した。
良くドラマとかである出会いのパターンじゃないのか、と。
そうとなれば、咲羅には悪いが俺は内心でちょっとだけ期待に胸を膨らませながら、手の触れ合った相手の顔を確認する。

「あれ…お前」
と、相手は俺がソイツの顔を拝む前に、素っ頓狂な声を上げてきた。
その時点で俺が心なしか落胆したのも無理もない。
声はどう聞いても低く、明らかに女の子のモノではなかったのだから。
ま、人生そんな甘くはねぇわな。

諦め半分に、俺もいよいよソイツの顔を確認する。
「お前…黒霧だろ!?黒霧忍!」
本屋の中だと言うのにソイツは声を大にして俺の名を叫んだ。

俺の目に映ったのは、金髪ロン毛の男だった。
はて、この男は俺の事を知ってるようだが、俺はこんなヤツ知らないぞ?
「…」
俺が訝しげな目でジロジロと見ていると、ソイツも俺が誰だか判っていないと察したのか、
「俺だよ俺、氷室衛太だ!覚えてないか!?」
自分の顔を指差して、何とも親切な事に自己紹介してくれた。

「ひむろ…えいた?」
呟く様に相手の名前を口にし、俺の記憶が段々と蘇る。
「え、マジで、先輩!?氷室先輩か!?」
「やっぱり忍だ!へぇ、何だよお前、大きくなったなぁ!」
思い出してもらえたのが嬉しかったのか、氷室衛太は満面の笑みを浮かべた。

「いやいや、金髪にはなってるわロン毛にはなってるわで全然気付かなかったっすよ!元気してました!?」
「まぁ確かに今のナリじゃ気付いてもらえなくても仕方ねぇな。
それより久しぶりに会ったんだ。どうだ、今時間あるならちょっと話さないか!?
こんな所じゃなんだし」
「全然構わないっすよ!積もり積もった話もあるし!」
久しぶりの再会を果たした俺と氷室先輩は即意気投合し、そうと決まればと早速本屋を後にした。


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