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雪月花

「解せぬ…」
余程悔しかったのか薫は未だに眉間にシワを寄せている。
その傍ら、
「シノブ、凄いことに私は気づいてしまったかもしれない」
部屋の中を見回しながら、不意にれいんがそんな事を言い出した。

「な、なんだ?」
何があったのかと、俺も釣られて部屋の中をキョロキョロ見回す。
何も変わった様子はないが…

「ツンデレのナギにヤンデレのカオル、気の弱い後輩タイプのユマ、綾○レイを彷彿とさせる無口キャラの私…
この部屋は今…混沌に満ちている」
「やかましい!!」
俺は疾風の如く勢いでちゃぶ台の上にあったミカンの皮を拾い上げれいんへと投げ付けると、やってられなくなり立ち上がった。

綾○レイを冒涜すんじゃねーや。
こんなヤツとは似ても似つかないっつーの!

「シノブ、何処に行くの?」
と、ミカンの皮を肩に乗せたままですっかり柑橘臭くなったれいんが問うてきた。

「何処でも良いだろ。散歩だ、散歩」
「ならついでに本屋に行ってコミック版のF○te/Z○ROの新刊を買っ――――」
「断る」
「お釣りでアイス買ってい――――」
「断るッ!」
「じゃあお兄ちゃん、ついでにミンテンドー3OSを――――」
「何薫まで便乗してんだ!」
「ソフトはデルダの伝説がい――――」
「てかついでに買うもんじゃねーだろ、3OS!」

俺は不服そうなれいんと薫をシッシッとあしらうように手を振り、居間を後にした。

クソッタレ。
折角の憩いの場が凪が来ただけで、まるで養鶏場みたいにやかましくなってしまった。



当てもなくブラブラしていた俺は、結局商店街にある本屋に来ていた。

さすがにこの時期にもなると何処もかしこもクリスマスムード一色で、イルミネーションやら何やらで華やかだ。
こんな所を一人で徘徊しているだけって言うのはなかなかに肩身が狭い。

クリスマス当日なら胸を張って歩けるんだけどな。
咲羅とも一緒に過ごそうって約束してるし。

だったら今は、まだクリスマス色に染まっていない店に逃げ込むのが一番だと考えての事だった。
別にアイツに頼まれた何とかって本の新刊を買うためじゃない。
ただ単に一人で居ても何らおかしくないって理由からだぜ。

かと言って、目的もなく来店しただけの俺には買いたい本なんてモノはなく、適当に目についた雑誌を立ち読みするだけ。
店からすれば迷惑なことこの上ない客であろう。


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