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雪月花

「ナギ、どうせならここに住めばいいじゃない」
なんて、俺と凪のやり取りをずっと黙って聞いていたれいんは読んでいた本(文庫本かと思ったら漫画じゃねぇか)を閉じ、久しぶりに口を開いたかと思えば、なんとも余計な事を言ってくれた。
なめんなよ?
居候してる身だろうが。何凪にまで居候する事をオススメしてやがんだ。身分を弁えろ。
しかし凪は、
「いや、私は絶対一人暮らしするわよ」
と、れいんの提案を一蹴した。
「折角ですもの。自立した人生を送ってみたい」

本気って事はわかったが、そう言う割りに行動が伴ってなくねぇか?
ホントにそうしたいんなら、とっとバイト見つけてそれに向けた準備をするべきだ。

「なるほど」
と、れいんは頷き、
「なら私に良い案がある」
「ホント!?」
凪はれいんの言葉を鵜呑みにし、猫の様に鋭い目を輝かせた。
俺もついホントかとれいんの言葉に耳を傾ける。
凪を追っ払えるかもしれねぇと思ったからじゃねぇ。
何故良い案があるくせに、コイツはいつまでもここに居座るのかが気になったからだ。
ホントに良い案なられいんも既に実行していていいハズだろ?

れいんは凪の目を見つめ、
「学校の近くに河川敷がある。
前に通りかかった時、そこにブルーのテントが何個か張られていた。
あそこなら家賃もかからないハズ」
「冗談じゃないわよ!」
凪はすかさず突っ込んだ。
他にツッコミがいると楽だな。
しかしれいんは微塵もふざけた様子もなく、
「メリットならある」
「メリット?」
「河川敷に住めば漏れなく星や河童、金星人と友達になれる」
「何処のアンダー・ザ・ブリッジだよ!!」
たまらず俺も突っ込んだ。

ついさっきツッコミが他にいると〜ってのは撤回する。
凪の野郎はツッコミを入れるどころか、まじで?とでも言わんばかりに目を輝かせていやがるのだ。

「まだこっちに来たばかりのナギには友達が少ない」
「確かにれいんの言う通りね。
僕は友達が少ない。
友達も出来るし一石二鳥かもしれない」
と、凪も頷く。
ちょっと待て、お前一人称僕じゃなかっただろ!モロになる!御叱り来るからモロはやめろ!

「河川敷に住むだけで隣人と友達になれる。
これぞ残念ではないホントの隣人部」
「後は私のプライド次第ってワケね…」
ぐぬぬ…と凪は顎に手を当て何やら考え込む。

いやいやいや考え込むまでもねーだろ!?
ちゃんと部屋借りろよ!?
れいんもれいんだ、何親友をとんでもない道に進ませようとしてんだ!

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あきゅろす。
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