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雪月花
23
「その通り。奇術をメインとする刺客が送られてくる可能性が高い」
「でも、奇術でも死なないんじゃないの?
燃やされたりしても、どうせ生き返るでしょ」
「またもやその通り」
葉月は良くできましたと言わんばかりに、満面の笑みを浮かべて見せる。

「じゃあ刺客来てもダメじゃん。裏切り者始末出来ないじゃん」

葉月さんはそれを待っていましたと、
「あるんだ、方法が」

「ほぅ?」
「奇術師の間でも禁忌中の禁忌。禁断の奇術が」

禁断の…奇術?


「そう。その名を“パンドラ”」


パンドラ…?
「パンドラって…あの箱か?開けたら中身は希望か絶望か…みたいな」

「まぁ意味合い的には同じだろうね。
そのパンドラって術を使えば、文字通りれいんくんの存在そのモノを消せる」

…存在そのモノを?

「ああ。この現世から存在そのモノを。
そもそも君は奇術を使うに当たって必要なモノが何かわかるかい?」
はい、出ました葉月さんのなぞなぞコーナー。

俺は奇術師じゃない。判るわけなかろうよ。

「それは精神力」
「…精神力?」
「奇術を具現化するにあたって、その術のイメージが大事なんだ。
例えば、れいんくんの使う奇術。剣や炎だね。
一見簡単に出してるように見えるけど、あれはあれでかなりの精神力を費やしてるんだ」
そんな難しい事なのか。

「奇術を使いこなす上で一番重要なのがそれだからね。
ちょっとでも自分の中で迷いがあったりしたら、まず思うように術を発動させる事なんて出来ない」
「まぁそれはわかったけど…今までの話と何の関係が?」

「ここで、そのパンドラと言う術の話に戻るんだ。
それを踏まえた上でね」
「…はぁ」
また難しい話になってきた…。


「パンドラが禁断の奇術となったワケ。
それは成功率の低さ、そして、成功してしまった場合の被害のデカさにあるんだ」
葉月さんは一点を見つめたまま口を動かした。

「…被害のデカさ?」
「あぁ、使い方によってはパンドラは世界をも滅ぼす事が出来るんだ」

…世界をも!?なんだそりゃ、またチート技か!

「しかし、発動にはかなりの精神力、集中力を要する。奇術の中でも大技だから発動までのロード時間も長い。
並大抵の精神じゃ、まず発動段階で失敗する」

「…失敗?」
何やら嫌な予感がする。
葉月さんも躊躇いながら、小さな声で言った。

「良くてパンドラを発動した者の存在が消失、悪くて暴発…だね」
「――――」
俺は言葉を失った。

「暴発だけは、何がなんでも避けなければならない。
制御が一切利かなくなる分、何が起きるかわからない。
最悪、ホントに世界が終わってしまう」
「そんな危険な術をれいん一人のタメに使うってのか?
馬鹿げてる…」
世界とれいん一人を天秤にかけてやがるってのか!?

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あきゅろす。
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