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雪月花
10
「俺は構わんが」
「じゃあ…私、スーパーの中で待ってますから、忍さんの買い物が終わったら呼びに来てください!」

たったこれだけの事を言うのに顔を真っ赤にし、大きく息を切らすユマッペ。
そんなに気合いを込めんでも大丈夫だ。

「了解したぜ。
あ、買い物袋は俺が持ってるよ。何やら重そうだし」
自分で言うのも何だが、俺のなんて親切な事だろうか。
この優しさがいつか牙を剥くことにならないと良いぜ。

一方、手を差し出されたユマッペは、
「え、あ…私はだ、大丈夫ですよ?」
今のどこに慌てるポイントがあるのだい。

もうここはユマッペの反応とかに構わず、例の買い物袋達をぶんどる事にする。
「良いって事よ。その代わり、今夜も美味い夕飯頼んだぜ、橘シェフ?」
「ま、任せてくださいです!
それじゃ、また後で!」
そう言って、ユマッペは何やら嬉しそうにスーパーの中へと消えていく。

しかし、この買い物袋。
持ってみて思ったが、やはりクソ重い。
こんなのずっと持ってたらユマッペの腕引きちぎれちまうんじゃないか?
てか、いつもこれくらい買い込んで来るよね、あの子?
いつもこんな重いもん持ってんの?マジか?

っと、俺もいよいよ自分の用事を済まさんと。
スーパーから目と鼻の先の本屋を目指して歩き出す。

マジ俺の頭のレベルに合うのがあると良いんだが。


―――――と、その時。

「あのぉ…ちょっと良いですか?」
背後から何者かに声をかけられた。
何かを伝え忘れたユマッペが戻って来たのかとも思ったが、今の声は俺の知るユマッペの声ではない。
そもそもこんな声のヤツ知り合いに居たか?


何事かと、渋々ながら振り返る。


俺の目に映ったのは、俺と同い年くらいの女だった。
案の定、見知らぬ他人。

腰下まである長い髪を靡かせて、猫のようにつり上がった目で俺を見つめてくる。
なかなかのべっぴんさんだ。
しかしこんな綺麗な子が俺なんかに何用か?



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