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雪月花
118、開眼

昨日に続き全身に傷を負った俺は、途中までは自力で歩いていたが、すぐさま断念。
結局、家まで六条におぶってもらう事になった。


そんなこんなで、今は自室である。
俺の体は、六条によって布団の上に乱雑に横にされた。
かけられた布団は、俺の顔まで覆ってる。
「苦しい」
と俺が言うと、六条は布団を完全に剥いだ。
「剥がれたら寒いよ」
と言うと、また俺の顔まで布団をかぶせる。
足先が出てるから、足が冷える。
この女は程ほどって言葉を知らないのか?


「今夜は、さすがに大変だったわね」
と、六条が話を切り出した。
「あれは無理だよ」
「でも、シノブも一匹は倒せてた」
「まぁ…たかが一匹だがな」
「とは言え、シノブも頑張ってた。
力もだいぶ使えるようになったみたいだし、充分よ」
六条が僅かに口元を緩めた。

「その力だけど、使おうと思って出来るもんなのか?
お前のはそれで出来てるかもしれんが、俺の力の発動はランダムな気がする」
横たわったまま、俺は右手を天井に向けて掲げた。
確かに発動はする。
でも、それは発動して欲しい時に出来てこそなんじゃなかろうか。
ちょっと何かを考えた六条は少し間を置いて、
「普通はそうだと思う」
と言い、
「普通、炎を使う場合、その炎を脳内でイメージする。電気を発生させる場合もそう。
私の剣も、奇術も、そのイメージから出現する」
そう続けた。

「でも、その方法で使えないとなると、どうすりゃ良いんだ」
俺は率直な疑問を六条にぶつける。
「そうじゃないとなると私にも判らない」
六条が上記の様な反応をするだろうって事はわかってた。
今の状態でも、全く力を使えないワケじゃない。
それでも使いたい時に使えなきゃ、クソ程の意味もない。
どうしろってんだ。


「とりあえず」
六条が再び話を切り出した。
「んぁ?」
と、俺も横になったまま、六条の言葉に反応する。
「その傷を治さなきゃ特訓どころじゃない」
「例の応急処置か。
昼間も思ったんだが、あれだけの傷どうやって治したんだ?
これも奇術みたいなもんか?」
「そんな所ね」
言いながら、六条が俺の上半身を起こす。
その時、俺の脳裏をある不安が過ぎった。
「い、痛くないよね?」
それを聞いた六条は一瞬目をパチクリさせた。
が、直ぐに、
「痛くない。すぐ終わる」
と、頷いた。
痛くないなら良いや。ホッとした。

その時、
突然、俺の目の前が真っ暗になった。

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あきゅろす。
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