雪月花
118、開眼
◇
昨日に続き全身に傷を負った俺は、途中までは自力で歩いていたが、すぐさま断念。
結局、家まで六条におぶってもらう事になった。
そんなこんなで、今は自室である。
俺の体は、六条によって布団の上に乱雑に横にされた。
かけられた布団は、俺の顔まで覆ってる。
「苦しい」
と俺が言うと、六条は布団を完全に剥いだ。
「剥がれたら寒いよ」
と言うと、また俺の顔まで布団をかぶせる。
足先が出てるから、足が冷える。
この女は程ほどって言葉を知らないのか?
「今夜は、さすがに大変だったわね」
と、六条が話を切り出した。
「あれは無理だよ」
「でも、シノブも一匹は倒せてた」
「まぁ…たかが一匹だがな」
「とは言え、シノブも頑張ってた。
力もだいぶ使えるようになったみたいだし、充分よ」
六条が僅かに口元を緩めた。
「その力だけど、使おうと思って出来るもんなのか?
お前のはそれで出来てるかもしれんが、俺の力の発動はランダムな気がする」
横たわったまま、俺は右手を天井に向けて掲げた。
確かに発動はする。
でも、それは発動して欲しい時に出来てこそなんじゃなかろうか。
ちょっと何かを考えた六条は少し間を置いて、
「普通はそうだと思う」
と言い、
「普通、炎を使う場合、その炎を脳内でイメージする。電気を発生させる場合もそう。
私の剣も、奇術も、そのイメージから出現する」
そう続けた。
「でも、その方法で使えないとなると、どうすりゃ良いんだ」
俺は率直な疑問を六条にぶつける。
「そうじゃないとなると私にも判らない」
六条が上記の様な反応をするだろうって事はわかってた。
今の状態でも、全く力を使えないワケじゃない。
それでも使いたい時に使えなきゃ、クソ程の意味もない。
どうしろってんだ。
「とりあえず」
六条が再び話を切り出した。
「んぁ?」
と、俺も横になったまま、六条の言葉に反応する。
「その傷を治さなきゃ特訓どころじゃない」
「例の応急処置か。
昼間も思ったんだが、あれだけの傷どうやって治したんだ?
これも奇術みたいなもんか?」
「そんな所ね」
言いながら、六条が俺の上半身を起こす。
その時、俺の脳裏をある不安が過ぎった。
「い、痛くないよね?」
それを聞いた六条は一瞬目をパチクリさせた。
が、直ぐに、
「痛くない。すぐ終わる」
と、頷いた。
痛くないなら良いや。ホッとした。
その時、
突然、俺の目の前が真っ暗になった。
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