[携帯モード] [URL送信]

雪月花
117
「…………………!」


至って普通のパンチが、吸血鬼の腹に綺麗に入った。

「な、なんでだぁああああああ!」
今の出来るパターンじゃねぇのか!?
ページ跨いどいて出来なかったとか、恥ずかしすぎるっ!
穴があったら入りたいわぁああ!!

「こっちは終わったわ。
最後の一匹よ。最後はシノブがやりなさい」
そんな事を言いながら、六条が俺の元にやって来た。
それを聞いた俺は、公園内を見渡す。
さっきまで居た吸血鬼の群れは、跡形も無く消えていた。

残るは俺の目の前にいる一匹のみ。
見てみれば、六条はピンピンしている。
あれだけの数の吸血鬼と戦って無傷とは、つくづく凄いヤツだ。

「ろ、六条。
俺、力を頭ん中でイメージしてやってもダメなんだけど、お前どうやってんの?」
六条は小首を傾げた。
「さっき出来たって喜んでたじゃない」
いや、さっきのはイメージもクソも無く、頭ん中真っ白だったんだが…

「私は、自分の手の中に炎が生まれるイメージをして――――」
「そんなの俺もしてるんだよ!
なのに何故出来ない!」
「想像力の問題じゃない?」と言うと、六条は見せびらかすかの様に、手の内に炎を発生させた。

「ちくしょう。満ち足りた顔が憎たらしいぜ」
「シノブ。しゃがんで」
「…え!?」
その直後、六条は俺目掛けて炎を放つ。

「う、うわぁあああああ」
間一髪で避けられたものの、何て事しやがる。
六条が無言で指指す。
その方向を、俺も目で追ってみた。

「コ…フ――――」
俺が避けたその炎に、吸血鬼は包まれていた。

すっかり談笑モードになっていた俺を、コイツは襲おうとしていたのだ。
油断も隙もありやしねぇ。

今回は六条のおかげで助かったが、一歩間違えれば俺が火達磨だったぞ。

「油断大敵」
六条は小さな声で言うとスタスタと歩き出し、帰るわよ、と付け足した。

[前へ][次へ]

13/102ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!