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雪月花
115
調子づく六条に負けてられないと、俺も一気に吸血鬼に走り寄る。

そのまま、俺も俺なりに殴りかかった。
しかし、俺の拳は吸血鬼の体を貫通する事はなく、相も変わらず普通のパンチで、大してダメージになっちゃいない様子だ。畜生。


「はぁああっ!」
高らかに舞い、吸血鬼達を次々に火達磨にする六条。
「やめて!」
切り裂かれる俺。
「てやぁあ!」
火達磨になった吸血鬼に次々と剣を振るう六条。
「あぅっ…!」
デコピンされる俺。


気付けば、公園内の吸血鬼は半数にまで減っていた。
紛れもなく、全て六条のおかげである。
余裕が出来た六条は、俺の元へと飛んできた。
「大丈夫?」
言って、地面でうずくまる俺に手を差し伸べる。
そんな六条の優しさに触れた俺は、
「もうダメだ。俺には荷が重すぎる…」
六条の手に捕まって起き上がりながら、弱音を吐いた。
まったくもって太刀打ち出来ない不甲斐なさ。お恥ずかしい。

そんな俺の言葉を聞いた六条は、
「数が数だから。
それでも、シノブはシノブで頑張ってた。もう一踏ん張りよ」
俺を慰めた。
「ちょ、やめて?
今優しい言葉かけないで。マジ泣けて来るから」
そんな俺の様子を見た六条は、フッと鼻で笑うと、再び吸血鬼の群れの中に飛んで行く。
次々に敵を切り裂く六条。

「くそっ…」
俺、足手まといなんじゃないか?
そもそも俺は昨日どうやって力を使って倒した?
特に何も考えてなかった気がする。
もう痛みやら何やらで頭ん中が真っ白だったのだ。
気付いたら例の力が使えていて、吸血鬼が消滅していて…


「ガァアアアアア――――!」
試行錯誤する俺に、吸血鬼が走り寄る。
くそったれ!まだ色々考えてる最中だっての!

今にも殴りかからんとする吸血鬼に、俺も反射的に右手を突きだした。
しかし、これはまた避けきれずモロに食らうパターンだと瞬時に判断し、歯を食いしばり目を瞑った。
またやられた!!

「…っ!」
もう吹き飛ばされてもいい頃なのだが、俺の体が空中を浮遊している気配も痛みもない。
何事か、と恐る恐る目を開ける。
吸血鬼のパンチは、俺には届いていなかったのだ。
いや、届いてはいる。
しかし、そのパンチを俺の右手がガッチリと抑え込み、受け止めていた。
「み、右手ぇえええッ!」
お前が受け止めたのは、食らえば骨折を免れないあのパンチだぞ!?大丈夫なのか、右手ぇええ!?
痛みがない所からすると、無事なのだろうが。
「グ…グォオオオッ…」
吸血鬼が俺から手を引き離そうとする。
が、それを掴んだ俺の右手はヤツの手を放さない。
チャンスなんじゃないか、これは?
「うおぉおおお!」
俺は吸血鬼の手を掴んだまま、吸血鬼に背を向ける。
別に逃げるワケじゃない。
一本背負いをしてやるのだ。
「ぐぬぬぬぬぬ!」
重い。重いが何のこれしき。
確かに六条程の怪力は俺にはないが、俺とて男の子である。人一人担げるくらいの腕力は持ち合わせてる。
「うおりゃあああああ!」
とにかく無我夢中で地面に投げつけた。

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あきゅろす。
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