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雪月花
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「無理無理無理無理ッ!
一匹だって倒せるか危ういのに二匹は無理だって!
六条、マジ助けてっ!ヘルプ!!ヘルプミィィイイイ!!」
動揺を隠せず、無様にも慌てふためく俺。
そんなのお構いなしに、凸凹コンビの吸血鬼は無言で俺へと歩み寄る。

「シノブ!」
さすがに今の俺では二匹相手は無理と判断したのか、六条が俺の元へと跳んで来て、シュタッと見事な着地を決めてくれた。
「来てくれた!六条が来てくれた!ありがとな!?マジありがとう!
俺は一人じゃ何も出来ないクズだって事が良くわかった!
やっぱ人間誰かに支えられて生きてるんだと―――――」
「シノブ、落ち着いて。キャラが崩壊しかけてる」
俺を諭しながら、強き者が弱き者を守るかのように、俺の前に立ち身構える六条。
その画ときたら、まるで映画版ジャイアンに守られるのび太のようだ。
「む、むぅ…
テンパりすぎてどうにかしてたぜ…」
六条と言う無敵艦隊並みの助け舟が出たおかげで安心し、何とか落ち着きを取り戻す事が出来た。
そこで俺も六条に習い、六条と同じポーズで身構える。


そんな俺達の前まで来ると、二匹の凸凹コンビ吸血鬼は立ち止まった。
「コフー…」
吸血鬼達の荒い息だけが、静寂に満ちた公園に轟く。
ちくしょう、やっぱり怖ぇ。
俺の前にはあの六条が居ると言うのに、恐怖心ってヤツはなかなか拭えないらしく、構えた手が、足が、ガクガクと震える。
今にも膝から崩れ落ちそうな程だ。
「ろ、六条。二匹もどうする。俺どっちと戦えば…
どっちが弱いかな…?」
手足の震えを押し殺そうとしながら、六条に問いかけた。
が、六条は六条で顔色一つ変えず、いつもの声のトーンで、
「残念だけど、二匹じゃないようね…」
変な事を言ってくれた。

六条の言葉を混乱した俺の脳が理解しようとする間に、凸凹吸血鬼の後ろから、二匹、三匹と立ち入り禁止のロープを跨いで新たな吸血鬼が姿を現した。

「―――なっ!?」
気付けば、俺と六条は吸血鬼の集団に取り囲まれていた。その数ざっと10匹以上。
俺と六条は言葉を交わす事はせず、無意識のうちにお互いに背中を合わせて身構えるフォーメーションに移行していた。
一応これでどの方向から攻撃されても対応は出来るが…
一体この状況はどうなってやがる。

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