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雪月花
110
俺達の向かった先は、昨夜と同じ公園だった。
その公園はと言うと、昨日の俺と吸血鬼との戦いのせいでベンチが壊れていたり、木がへし折れていたり。
それらの理由からか公園自体が閉鎖されてしまっていた。
って言うか、明らかそれが原因だろう。
入り口は見事なまでにロープが張られ、立ち入り禁止となっている。

元々利用者が少なかったとは言え、整備の行き届いていた公園を荒らしたと思うと心が痛んだ。
物が壊れたのは吸血鬼の野郎が暴れたからであるのだが、俺のせいじゃないと言えば嘘になるかも知れない。


辺りは静寂。滲む街灯だけが公園の一部を、寂しく照らしていた。
六条は昨日と同じく枯れ木の上に身を隠し、俺はと言うと、やはり一人ベンチに座ってる。
公園の奥にある無事だったベンチにだ。

とりあえず、今日は六条がいなくても、どいつが吸血鬼かは俺でも判る気がする。
閉鎖された公園に、こんな時間に一人で入って来るヤツは常識的に考えて居ないからな。
まぁ、俺だけでは戦力面に何かと不安が残るから、六条には居てもらわなきゃならない。
ってかマジ居てくれ。


「…!!」
今日は昨日と違い、時間にすると待ち伏せしてから20分くらいだろうか。
木の上の六条が反応を示した。
即座に俺に気付くよう、枯れ枝を俺が座る方へと投げ捨てる。
吸血鬼のお出ましである。


閉鎖された公園のロープを跨ぎ、園内に足を踏み入れる変質者。
俺もベンチから立ち上がり、昨日のように不意打ちを食らわぬよう臨戦態勢に入る。

「ぇ……」
そこで、俺は予期せぬ事態が自分に降りかかった事に気がついた。

六条の居る木の下の入り口を通過する先程の吸血鬼。
そして、その吸血鬼に引き続き立ち入り禁止を意味するロープをくぐり抜けるもう一つの影。

2つの影が俺の方に向かって歩いてくる。
一つはデカい影。なかなかにガタイが良い感じだ。
そしてもう一つは小柄な感じ。
二人とも、昨日の吸血鬼同様、目玉が綺麗に赤く発光していた。

冷たい夜風が吹きさらす。
俺は空を仰ぎ見た。
今夜は雲の流れが速く、月は隠れたり出たり大忙しだ。
もう10月も半ば。もうすぐ本格的に寒くなる。
今年は雪なんか降ったりするんだろうか?
積もったら咲羅や神童達と雪合戦でもやりたいな。
冷えた体はユマっぺ手製のお汁粉を飲んで温めたりしてさ…

…なんてのん気にモノローグで現実逃避してる場合じゃねぇ!!
2匹だとぉおおおおおおおおっ!?

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