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雪月花
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「いやいや、今日は無理だぜ。
回復しつつあるからには咲羅と後夜祭に出たいしな」
俺の返答を聞いた六条は、やれやれと言った感じで言った。
「昼間なら、シノブがどこに行ったって構わない。
でも、吸血鬼が行動を起こす夜は私と一緒に居てもらう。
あんたを狙った吸血鬼が、この学校に来たらどうする気?
関係の無い人がまた襲われる事になるかも知れないの。
イヌガミさんやアイツも例外じゃないのよ」
と。
あれ?今アイツって言った?
ってか、アイツって神童の事だよな?
せめて神童と書いてアイツって読んでやれよ。既に名前ですら呼んでもらえなくなってるじゃねーか。いくらなんでも不憫すぎらぁ!

「彼女達を巻き込みたくないのなら、夜はハンターの私と一緒に居るのが一番安全よ」
六条の目は相変わらずの無機質だが、至って真面目な物言いだ。
「それは俺に後夜祭に出るなって言ってるんだな」
そう、と六条は頷いた。
クソッタレ。
六条同伴の上での後夜祭参加なら大丈夫かとも思ったが、夜に俺が人混みに居るってのがそもそもダメな訳かよ。
何で俺の体から吸血鬼なんかの波長が出てやがる。
思わず自分の血を呪っちまう。
せっかく今までの埋め合わせが出来ると思ったのに、これじゃまた距離が開いちまうんじゃないか。
「シノブ、これだけは忘れないで。
私達は一度負けているの」
と、六条は窓の外を見、遠い目をして言った。
いや、俺はそいつに会った事すらないんだが…。
「ナメられてると言っても良いくらいよ。
私達がモタモタしていたら、あいつによる犠牲者が増えていく。
それを阻止する為にも、早い段階で殲滅する必要がある」
そ、それはそうかも知れんが…
「文化祭なら来年もある。
今年中に殲滅を終わらせて、来年の文化祭は私達も楽しみましょう。
そうね、バンドなんて面白そう。やってみたいわ」
六条が口元だけで笑顔を作る。
何でよりによってバンド?
俺には音楽の才能なんて無ぇぞ。

とにかく、と六条が俺に詰め寄る。
「今日は特訓が優先。
シノブにとっても昨日の感覚を忘れないうちの方が良い。
帰ったら今日の作戦を伝えるから、またシノブの部屋に集合しましょう」

どうにも、俺に選択の自由って奴は無いらしい。
ついでに、憩いの一時って奴もだ。
あそこまでそれっぽい事言っておきながらドタキャンとか、咲羅に会わせる顔がねぇよ。
仕方がないから、やはり体調が優れないとでも言うしかなさそうだ…

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