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雪月花
107
「忍。れいんちゅわんを知らぬか?どこにも居ないんじゃ!」
けたたましい程の声を上げながらやって来た次なる訪問者は、神童だった。
「六条など知らぬ。判ったらとっとと去ね」
面倒だから適当にあしらう事にした。
恐らく、六条を後夜祭にでも誘おうとしていたんだろう。
この分だと逃げられたか。
無様だな、神童。

俺が六条の行方を知らないと知ると、神童はショボンとしながら保健室を後にした。
六条め、モテモテじゃないか。
こんなに想ってもらえる事なんて、人生のうちでもそうそう無いだろう。
神童とくっついちまえば良いんだ。
と、その時――――
「どうにも彼は苦手ね。実に煙たいわ」
「なっ、え!?」
どこからともなく聞こえた六条の声に、俺は保健室内を物凄い速さで見回した。
そして、未だに六条の姿を確認出来ていない俺の視界の下の方から、ヌゥ…と、あの馬鹿女が姿を現した。
俺が居るベッドの下に潜んで居やがったのだ。なんて神出鬼没な女だ。
「どこから出て来てんだテメェは!ってか、いつから居やがった!?」
「シノブが保健室に行ったすぐ後よ」
俺の問いに、六条は制服に付いた埃を払いながら言ってのける。
「俺が保健室に来てすぐから今この瞬間までって…
判りづらいかもだけど、あれから4時間くらい経ってる設定だからね!?これ。
その間ずっとベッドの下に潜んでたってのか。
絵的に怖ぇえからっ!!ホラーじゃねぇか!」
「あまりにもしつこく一緒に見て回ろうってつけ回すものだから。私としても不本意よ」
つけ回すって神童か?まぁアイツくらいしかいないか。
しかし、相当神童の事が嫌いなんだな。

「ところでシノブ、傷はどう?」
と、唐突に六条。
「まぁ…おかげさまでだいぶ楽にはなったが」
俺の返事に六条は、そう…と大きく頷き、さも当然のように、
「それじゃあ今日の夜。また特訓よ」

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あきゅろす。
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