[携帯モード] [URL送信]

雪月花
106
何だかんだ言って、夢は膨らむ一方だ。
なに。捕らぬ狸の皮算用だって?
ラスボス吸血鬼をぶっ倒せば良いだけの話なのだよ、ワトソンくん。
ふん、一応俺も力は自分の意志で使えるよう努力はするぜ。
じゃなきゃどっかの誰かがうるさいし、敵に襲われた時に瞬殺されかねない。
しかし昨日、まんまと六条も強くなるよう仕向ける事が出来た。
俺がやる気を出したと思わせれば、あいつも乗ってくると判断したためだ。
案の定、六条はやる気マンマン。まったく、単純な女よ。

これであいつが今より数段強くなってくれれば、俺はヤツの援護だけをする。
そのまま六条がラスボス吸血鬼を倒してくれさえすれば、こっちのもんだ。
別に葉月さんとの約束じゃ、俺がこの手で直接ラスボス吸血鬼を倒さなければいけないワケじゃない。
あくまで六条に協力し、ラスボス吸血鬼を倒せば良いだけなのだ。
要は俺と六条、どっちが倒したかじゃない。協力したかしなかったかの話だろ?

ガララ―――
と、そんな俺のモノローグを遮って保健室のドアが開いた。
「忍、具合はどう?」
犬神咲羅である。その両手には焼きそばとたこ焼きがあった。
俺への見舞いの品らしく、咲羅はそれを手渡した。
「もうすぐ文化祭も終わり。お化け屋敷大繁盛だったよ」
俺が横たわるベッドに腰掛けながら、咲羅が笑顔で言う。
「そうか。これで俺も、晴れて実行委員の呪縛から解き放たれるわけだ」
俺はたこ焼きを頬張りながら、二度とあんな面倒な役員にはなるまいと心に誓った。
「忍は後夜祭どうする?体調的にキツいかな?」
「後夜祭か…」
後夜祭とは、文化祭の後に開かれる打ち上げみたいなもんだ。
そこでは大したイベントとかは無いんだが、何だかんだでそこで誕生するカップルも多かった。
俺と咲羅が仲良くなったのも、一年生の時の後夜祭がきっかけだったと言っても過言ではない。
今年は神童辺りが六条でも誘うんじゃなかろうか(笑)
「そうだな…まだ何とも言えん。それまでに体調が良くなったら参加するよ。
そしたら一緒に語り明かそうぜ」
今まで連絡が取れなかったし、良い機会かもしれないしな。
俺の返事を聞いた咲羅は大きく頷き、係りの仕事に戻るとだけ言って保健室を後にした。

[前へ][次へ]

2/102ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!