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雪月花
105、11月2日(土曜日)
文化祭当日。
開始直後から今の今まで、ずっと保健室で横たわっている俺からは、これと言って語る事は何もない。
とりあえず何も語らないってのもあれだから、少しだけ。

今も沢山の一般人が当校の文化祭に来ている。
今、この学校は軽くどっかの遊園地みたいなくらいの賑わいを見せていた。
ほら、廊下は嬌声で溢れてら。
楽しそうで何よりだよ。実にね。
語るとすりゃ、こんな所か。

まぁね、確かに俺も気になるイベントは沢山あったんだ。
どこぞの演劇部の舞台だとか、有志のバンドだとか。
気になった出し物とかは本当の本当に沢山あったんだ。
でも、まだ体中から痛みが抜けないってのが今の俺の現状であり。
だから一人、俺は寂しくも保健室で休ませていただいている次第なのである。
決して、モノローグで事細かく説明するのが面倒くさかったからとか、そんなんじゃない。本当だぜ?

「ふぁ〜あ」
と、大きな欠伸をしながら、昨夜の吸血鬼との戦闘で負った傷痕に手を置いた。
実際問題、傷が残ってないってのはありがたい。
あの体中に負った一生残るような深い傷。
俺が大人になった頃の事を想像しただけで鳥肌が立つ。
あんな身なりじゃお婿に行けない所だったのだ。
応急処置を施したとか六条が言ってたが、一体何をどうすればあれ程までの傷を1日で治せるのか。甚だ疑問である。

あまりにも暇を持て余した俺は、ラスボス吸血鬼を倒した際の報酬について考えてみる事にした。
俺が六条を手伝う気になったのも、葉月さんの提示したソレがあったからだ。忘れてもらっちゃ困る。

まず候補としてはアレだ。
巨万の富を得るとかどうよ?
ちょっと捻りは無いが、金が物を言う世の中だ。
それさえあれば困る事はないだろう。
その金で豪邸でも建てて、メイドでも雇って、毎日美味いもん食って、日々を満足するしかねぇ。

または…やっぱり黒霧の叔父さんと叔母さんを生き返してもらうか。
俺からすれば掛け替えの無い存在だったのも事実。
散々迷惑をかけて、最終的には俺達浅葱の何たるかに巻き込む形になっちまったんだ。
あんな結果を招いておきながらのうのうと生きていける程、俺は恩知らずな人間ではない。
罪滅ぼし的な意味も込め、今は後者が一番だろうか。

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