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雪月花
13
「おい、人の話聞いてるかぁ?」
「あ…え?」
突如耳に飛び込んだ彼の声に、私は慌てふためいた。

「お前、人には自分の話聞けって言うくせに自分は何だよ…
自分のコトは棚に上げるってか?
人に言うからには自分もちゃんとしろってんだ」
やっぱり一言多い…

心底呆れた、とでも言う様に黒霧忍は肩を落とした。

「え、えっと……」
「おばさん達に言って来るから、先に靴履いて待ってろって言ったんだよ」
「ああ――
はいはい…ごめん」
私の反応を見るやクルッと踵を返し、忍は一足先に階段を降りて行く。

本当はまだ帰りたくなんて無い。
しかしそれも、私の事を思って言ってくれているのだから仕方がない――――
そう自分で自分に言い聞かせ、私も彼の後を追って階段を降りるコトにした。


私が階段を降りて靴を履き終えると、それとほぼ同時に彼は玄関にやってきた。
「お待たせ。忘れ物は無いか?」
「うん。大丈夫だよ」
「そっか――――」
と、どこかぎこちない会話を交わし、忍の後に続いて私も外に出る。
さっきまで降っていた雨は嘘みたいにピタリと止んでいて、濡れた路面は街灯の頼りない明かりを照り返していた。


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