雪月花
12
余程印象が強かったのか、合格発表の日も自分の合格よりも彼の合格の方が気になった程だ。
所詮、彼の受験番号を知らなかった私には、彼の合格を祈るしか無かったのだが…
そんな感じで入学したら。
たまたま、入学式に、彼と昇降口ではち会い―――――
たまたま、クラスが同じになって―――――
たまたま、席が隣りになって―――――
そんな偶然が幾度と無く度重なった結果、気付けば私は彼の数少ない女友達の一人になっていた、という訳だ。
しかし改めて話してみれば、彼は口が悪く捻くれていて、考えはいつもクラスと相対的。
行事もサボる、何ちゃってヤンキーの様な一面も持っている少年だと知った。
時間が経てば経つ程、そんな彼を非難するクラスメイトの声も増えていく。
そんな現状の中でも、彼はちゃんと自分の意見というモノを持っていた。
嫌なモノは嫌と断り、受ける時は、きちんと受ける。
あやふやなまま、大して自分の意志も尊重せず、流れに身を任せて生きてきた様な私。
そんな私に比べれば、彼は全然しっかりしているのに…と、心の中では常にそう思っていたりもする。
私としても、ここまで気兼ねなく話せた男子は彼が初めてで、少し特別な思い入れがあったのかもしれないし、今思えばあんな偶然なんて無くても―――
私、犬神咲羅は初めて会ったあの時から、自分に無い何かを持った『黒霧忍』という一人の人間に惹かれていたのかもしれない。
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