風×骸
ヴァンパイアデビル
ぐぅぅうううぅう・・・!
暗い夜の森の中・・・その静かな闇に、空腹を知らせる音が元気よく響き渡る。
風「はぁ・・・お腹すきました。」
その音の原因である人物、風はかれこれ三日ほど食事にありついていない。今ではすっかり、やつれて空腹のあまり、夜寝ることもできず。
目の下にはこれまた立派なくまができていた。
風「ああ、もう・・・むり・・・で、すぅ―・・・」
ドサァッ
そしてとうとう風は、冷たく暗い地面に倒れてしまった。
(風:ああ、地面ってこんなに冷たかったんですね。でも・・・なんだか寝れそうな気がします。)
ガササッガサ!
骸「ふぅ・・・今日は家に帰るのが遅くなりましたね。クロームが居ないからと言って・・・ん?」
骸の視界に飛び込んできたのは、先ほど倒れた風だった。
(骸:うわぁ・・・なんでこんなところに人が・・・そもそもなんで、倒れてるんでしょう・・・)
風「うぅ・・・・ご飯」
(骸:しかもこの人、ご飯って言いながら泣いてますよ・・・。そこまで、お腹すいてるんですかね?)
骸「人を助ける主義はないのですが・・・。」
そう言いつつも、骸は自分よりも背のある風を軽々と担いだ
骸「飛んで行ったほうが早いですね・・・」
すると骸は、闇に溶け込みそうな漆黒の羽根をひるがえし、自分の家へと飛んでいった。
グツグツ・・・
(骸:一応できましたけど・・・)
骸は鍋から机に視線を変えた。そこには、フランスパンにチーズフォンデュ、オムライス、シチューなど
そのほかにも机から落ちそうなほどたくさんの料理が並んでいた。そして骸は作り終えたコーンスープを持って机に向かった。
(骸:そろそろ、起こしましょうか・・・)
骸「すみませーん。起きて下さーい・・・・」
そう言ってなんどか体を揺らしてみるが返事がない。
(骸:脈はあるから死んではなさそうですけど・・・ああ、そうだ。)
すると骸は、できたてのコーンスープを木のスプーンですくって風の口にあてた。
風「ヴぅッ!アツイ!」
風は突然の熱さに飛び起きた。そんな風に骸は落ち着いた声で話しかける。
骸「お目覚めですか?」
風は突然の熱さと目の前の見知らぬ青年に戸惑っていた。
風「へ?・・・あの、誰ですか?」
骸「・・・そうですねえ」
骸は顎に手をあて、考えるような仕草をしてしばらくするとフッと笑った
骸「ただの通行人ですよ。」
風「通行人・・・ですか?」
骸「はい、通行人です。」
風「お名前は?」
骸「人の名前を聞くときは、自分からでしょう?」
風「そうですね、すみません。・・・私はフォンです。」
骸「そうですか・・・では、フォンさん?なんであんなところに?」
風「その前にお名前を。」
骸は少し戸惑う。
骸「そんなに、聞きたいんですか?」
風「はい、聞きたいですねえ命の恩人ですから。」
骸「命の恩人だなんて・・・ただのきまぐれですよ。」
風「でも私はあなたに助けられた。つまりは気まぐれだったとしても、あなたが命の恩人ということに変わりはありませんよ。」
骸「・・・骸」
風「はい?」
骸「六道骸・・・それが僕の名前です。」
風「骸・・・いい名前ですね。」
骸「どうも・・・そんな事より早く食べないと冷めちゃいますよ?」
風「え?」
骸「料理・・・」
目の前に並べられた料理を見るなり風の目は一気に輝く。
風「これ全部骸が作ったんですか!?」
骸「はい・・・そうですが?」
風は骸の手をつかむ。
(骸:冷たッ・・・・)
風「すごいです!こんなにたくさんの料理!あの、全部・・・全部食べてもいいですか!?」
骸「は、はい・・・どうぞ。」
風「ありがとうございます。では・・・」
パァンッ
風は勢いよく手よ合わせると・・・
風「いただきます。」
―と嬉しそうな笑顔を浮かべ元気よくそう言った。
カッカッカッカカ、ゴクゴクゴクッ、ズズー、パクパクパく。
(骸:す、すごい勢いです。あんなに作ったのに。)
風が食べ始めてから十分もたたないうちに骸が作った料理の半分以上を風はすでに食べ終わっていた。
風「ふぅ・・・ごちそうさまでした。とてもおいしかったです」
骸「そうですか、よかったです。」
(風:よく見たら、まだ中学か高校生くらいだったんですね。・・・でも、なんだかものすごく、おいしそうです。)
骸「ああ、そうだ。他に何か欲しいものありますか?」
風「・・・欲しいもの?」
(風:骸・・・なんていったらドン引きされるの間違いありませんね。)
風「それじゃあ、デザートを」
骸「デザート?・・・すみません、今買ってきますね。」
そう言って骸はコートを着てドアのほうに向かう。
骸「すぐ、買ってきますから・・・なんですか?」
骸が振り返ると風がすぐ近くに立っていた。
風「買ってこなくても、デザートならありますよ?」
骸「ありませんよ。」
(骸:何言ってるんでしょう?冷蔵庫を見た訳でもないのに)
風「じゃあ、勝手に食べていいですか?」
骸「勝手にしてください。」
風「それでは、いただきます。」
そういうと、風は右手を骸の頭の後ろに回し左手で骸の首にかかってる髪の毛をあげる
骸「何のつもりです?」
風「だから、デザートを食べるんですよ。」
骸「残念ながら僕、そういう趣味無いんですけど?」
風「そうですか、でも勝手に食べます。」
骸「食べるってそういう意味で言ってたんですか?」
風「ちょっと違いますよ。食べるというよりは・・・吸うですけどね。」
そういうと風は鋭い牙を骸の首に突き立てる。そして口の中いっぱいに骸の血液がたまる。
骸「・・・ッ!?ウッ、くゥ!」
(骸:目の前が・・・真っ赤だ。力が入ら・・・ない)
バサッ
すると服を突き破り骸の背中から黒い羽根が現れる。
風「ごちそうさまでした・・・・ん?」
(風:どうりでおいしいと思ったら人間じゃありませんでしたか。)
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