夢を見たい
面倒事は嫌いです
美形の恐ろしさを知った私は(←)、その場から早く逃げようと「…では…これで、」などと言いながら足早に立ち去ったのだが、その腕は柳蓮二にパシッと掴まれ逃げることが出来なかった。
「……何ですか?」
自分でも、めちゃくちゃ冷めた声だったと思う。
でも…ごめんなさいね。私テニキャラは好きだけど今は別にどうでもいいのよね。それに男は嫌いだから…
単純過ぎて、物凄く嫌になるの…頭が痛くなる。
ほら…私の過去の出来事があったから、こんなにも貴方の腕を切り落としたくなる。
触らないで…
触らない、で…
触るな……―――
「…ぁ、いや…すみません。"〇〇書店"と言う本屋を探しているのですが…何処にあるか分かりませんか?」
そんな私の心中を知らない彼は、首を若干傾げながら私に道を尋ねてきた。
めんどくさい……
「まぁ助けてもらったのでこれくらいは…」と思い、指を差しながら道を教えてあげた。
「向こうの角にありますよ?」
「…そうですか!ありがとうございます。気付きませんでした……」
「ふふっ…見つかってよかったですね。」
口元に手を添えて不適に笑みを溢しながら、釘を指しておいた。まぁ彼は気付くだろうと少なからず思ったからだ…
私は彼が余所見をしている内にササッとその場を後にした。
もう会うことはないだろうね、
柳蓮二。
―――
俺は今日、普通に出掛けていた。
部活も休みでゆったりしながら町をフラフラしていたんだ。
すると道路を挟んで向こう側にある少女が居た。身長も女子にしては小さく、顔も可愛くなく、不細工でもなく"普通"。まぁ胸はそこそこあr……コホン。←
とりあえず小柄な少女が居て、普通なら眼中にないのだが……纏っている雰囲気が穏やかで、そこの世界だけが別次元のように…
俺は多分、ずっと見つめていた。横断歩道が青に変わり、周りに呑まれるように歩いていても…
ずっと、見つめていた。
すると突然、彼女が転けそうになった時に我に帰り、自分の場所から彼女の距離までそんなになかったので、とりあえず助けること一心に走った。
この時ばかりはテニスで鍛えといてよかったと、心底思った。
彼女を助けた際に持ち上げた荷物を渡しながら話しかければ、透き通った澄んだ声をしており不覚にもドキッとした。
だがその後、思わず腕を掴んだ瞬間…
空気が凍りつく様な…
そんな鋭い声で俺に「……何ですか?」と言った。
物凄く……"怖かった"。
掴んだ理由なんて俺にも理解不能だ。だが、何故か行かせたくなかった。今この手を離したら会えない気がして…それが堪らなく、嫌だった。
何とか会話を続けようと近くにある本屋まで道案内を頼もうと思ったが、最後の彼女の笑みで分かってしまった。
"もう近付くな"と、言われていることに。
背中に冷や汗が流れて息が出来ない…っ。何だ、コイツは……!威圧感が半端ない…一緒に居ると凍ったように動けない。
だが、
それさえも、
面白いと感じるのは……
「……いい度胸だ。」
彼女を手に入れたい、
そんな醜い感情が
俺の中に
生まれたからだ。
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