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〜有限の…〜 2−05
ネウロの笑いを含んだ言葉で、身に覚えがないだけにすっかり忘れていた、入院中の『あたし』とネウロの“約束”の一つを思い出した。
ネウロが、
『その時になればわかる』
って言って教えてくれなかった“約束”…
それが、コレ?
まじでなの?
そんなこと、夢にも思わなかったよ…!!
あたしじゃない『あたし』と交わしたんだから、反故にしてくれても構わないのに…
いや、イヤとかいうんじゃなくて。
最近は何か微妙な距離が出来てたから、あんまりにも急な展開すぎて、戸惑うに決まってるじゃない。
でも、あたしもネウロも、普段傍にいすぎてて、きっかけが掴めなくて、こういうことでもない限り…っていうなら…
こういう展開も、有りなのかなぁ…
何か納得出来ない部分ありすぎだけど!
「…つってネウロ、ずっとその“約束”忘れてたクセに?」
あたしは言ってやる。ほんとに、そんな素振りひとつ見せなかったクセに…って思うし。
「何を言う。忘れる筈がなかろうが」
「………」
あ、そぉ……
あたしはなんにも知らなかったけどさ。あかねちゃんですら、言葉を左右にごまかして、教えてくれなかったし。
こんな“約束”だったんだから、あかねちゃんだって云えないか…
…なんて、妙に納得した。
「心配せずとも、『ヤコ』とはあくまでも風呂に入る約束をしただけだ。しのごの言わず、準備しろ」
言うと、ネウロはあたしの首根っこを掴んで立ち上がった。
きっかけが成り行きだろうと何だろうと、お風呂に入ることは、本当の本気っぽい。いつものように、有無を言わさない雰囲気と力具合。
コイツ…
それに、『あたし』は、男女が一緒にお風呂入るって、どーゆーことなのかわかってないとしか思えないよ。
『あたし』はともかく、ネウロにそれは有り得ない…って思うんだけど。
心配せずとも…なんて、ムリ言うな。お風呂に入る約束をしただけって言うけど、いくら最近ああだからって、それだけってのは考えられないじゃない…!
やっぱり、ネウロはよくわからない。遠ざけてみたり、ぐいっと距離を縮めようとしてきたり……
イヤとかじゃ、ない。
だって…あたしは、最近のあたし達が不安で仕方なかったんだから。
…けど。
やっぱり、怖い…
なんて、今更だよね……
でも、仕方ないじゃない。
いきなり忍びこんでくるし。あたしが大事に掛けといた服から、こんなこと思い付いて(思い出して?)言い出すんだもん。急にもほどがあるよ!
―そういやネウロって、源泉そのまんまの熱湯に浸かっても平気で、むしろ満喫するんじゃなかったっけ…?―
浴室に連れてかれて、仕方なく湯船にお湯を張る。じゃーじゃー出る“適温”のお湯を眺めながら、ふと、そんなことを思い出した。
後ろには、ネウロが立っている。興味深げに、人間のお風呂、その準備を眺めてる。
ネウロって、やっぱヘンなの。
専門知識や余計な知識は凄いのに、こういう人間としてフツーのことは、からきしなことが多い。
つか、コイツに入浴の習慣なんてあったんだっけか? 事務所にそんな設備はないんだし……
なんて考えてたら、思わず笑ってしまった。
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