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〜有限の…〜 2−04

「それならば、今、着てみるか?」
「へ? 今?」
 唐突に言われて、びっくりする。


 そりゃ、着たい着たいって思ってきたけど、いくらなんでもこんな急に。

 それに…


「…でも、せっかく着るんなら、その前にシャワー位は浴びときたいんだけど」
 思わず口をついて出たのは、言い逃れになってるのかなってないのかわからないセリフ。

「面倒臭いな。そのようなものなのか?」
「うん。だって、ネウロが買ってくれた服だよ? 買ってもらってから、はじめて袖通すんだよ?」
「……」

 言い逃れにも本心はあるよ、それなりに。
 試着の時に着たとはいえ、あれ以来一度も着てないんだし、せっかくなんだから、一日の汚れを落として、さっぱりした上がいい。


 本当は、デートじゃなくてもいいから、外をふたりで歩いてる時に着るのが理想だったんだけど、ネウロ相手にそれはゼイタクかもしれないから、言わない。

 ネウロにとっては、そういうデリケートな…乙女心みたいな…気持ちって、やっぱ今でも理解が難しいものらしいから。

 だけど、それにしても。今ネウロが浮かべてる表情は…考えてることは…なんか微妙に違う感じがして、気にかかる……


 ちょっと間があって、あたしの頭を掴む手のひらに力がこもった。慣れた痛みに見上げると、ネウロは口元だけで笑って、
「…よし、風呂の準備をしろ。ヤコ」
「へ? いやいや…シャワーで十分だし」
「シャワー?」
 ヘンな顔をしたと思ったら、今度はクスクス笑うネウロ。なんとなーく、会話が噛み合わないなー。


「…ヤコよ。
 貴様は事務所に泊まっていきたいと、そう言ったな」
「うん」

 唐突に、何だ。

「そんな貴様の為に、逆に我が輩が直々に来てやったのだぞ。感謝するといい」
「…えーと?」
「ヤコが事務所に泊まる代わりに、我が輩がここに泊まってやる」

 何でそこでお風呂? とか、とりつくシマもない様子であたしを事務所から追い出したクセに? とか、突っ込みたいことはあったけど…
 …気が付いた。


―あ、もしかしなくてもあたし、ダイタンなこと言ったんだね、昼間。むしろ今!
 そんで、墓穴を掘った、と…!―


 だって、だけど、あたしが事務所に泊まることって、何だかんだでよくあったけど。ネウロがここに泊まったことはないんだよ。
 同じようでいて、意味は違うんだよ、まるっきり!

 てゆうか、あたしの言葉をすかさず捉えてもっともらしい理由付けしただけで、実のところ全くの思い付き。完全に成り行き任せでしょ、この状況に持ち込んだのって…!


「殊更気を遣う必要などない。いつものように過ごすがいいぞ。
 …が、後は入浴して寝るだけのようだからな。
 1人ではいられないと宣う、哀れな程従順な貴様の為に、この我が輩が一肌脱いでやる」

 やっぱり…一緒に入る気なんだ…!



 ため息しか出てこない。

 これも…気紛れってやつなのかな?


「そんな急に…本気で言ってんの?
 だいいち、泊まるはともかくとして、あの服を着るってだけで、お風呂とか、どうしてそーいう話になるかな?」
「急に…だと?
 あぁ貴様は覚えていないのだったか。
 …これは果たすべき約束なのでな」
「約束?…なにそれ」
「明日にでもアカネに確認するといい」








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