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〜有限の…〜 2−02
ふわっ…と
首筋を風が通った感覚に、頭を上げた。
窓は閉めておいたはずだから、風を感じるわけがない。けど、今は開いてる。間違いない。
自然に窓が開くわけもない。
ここは二階の部屋。だとしたら……
不審に思うよりも先に、嬉しいと思うあたしは、自分こそがヘンなんだって、わかってるんだ。
体ごと窓辺に振り返ると、そこには、やっぱり…
窓枠の上を掴んで、長い体を窮屈そうに折り曲げた状態で座り込んでるネウロが、やっぱりそこに、いた。
また、鍵を勝手に開けて…!
そう、思ったけど。
思いはしたけれど…
「ちょ、見つかっちゃう!
入るならさっさと入っちゃってよ…!!」
あたしはとっさにネウロのスーツの袖を掴んで引き寄せた。
勢いがあるだけの、ネウロにとってはどうってことのない、ごくごく軽い力のはずなのに、ネウロは呆気ないほど簡単に部屋に引き込まれてしまって、正直驚いた。
跳ぶように舞い降りるように、音もなくフローリングに降り立つ仕草が、いちいちキザだけど…
うかつにも、見惚れちゃった。
窓をぴしゃりと閉めながら、そういえば、ネウロは黙ってれば存在を感知されにくいんだってことを、思い出したけど…
何にしても、女の子の部屋の窓に、男が、今にも入らんばかりの様子でいるのは、常識的にも光景的にも、シャレにならないんだから。うん。
ネウロは目を細めてあたしを見ている。ちょっと恥ずかしくて、落ち着かなくなってきて、
「…どうしたの? いつからそこにいたのよ」
取って付けたように問いかけてみる。
「…フム。我が輩がここに来て、それほど時間は経っていない筈だが」
ネウロはゆっくり歩きながらベッドに歩み寄る。そのまま腰掛けて、そう言った。
『筈だが』…?
「それで、『謎』の気配…なの?」
「別に」
「は?」
「…特にそういったものは感じん」
『は?』って切り返しちゃったけど。うん、わかってる。来て早々ベッドに腰掛ける時点で、『謎』じゃあないよね。
「じゃあ、何のよ…」
「用事がなければならんのか?
奴隷に対して、そのような理由が必要なのか?」
遮られて追い被せられた言葉に、あたしはまた驚いた。いや、いかにもネウロらしい言い回しだったけど、それに驚いたんじゃなくて。
あたしには、用がなければさっさと帰れって言ったクセしてさ…
でも。でも…さ…
何だかくすぐったくって…
何だか嬉しくって……
あたしに逢いにきてくれたんだね…って思えば、嬉しくないほうがおかしくて。
ネウロは悠然と脚を組んで、あたしの部屋の中をぐるりと珍しそうに見渡していた。そういや久しぶりだからね。ネウロがここに来るのって。
それにしても、あたしが気付くまで、黙って窓枠にいるつもりだったのかなぁ…?
思った途端に、ネウロは笑う。
「貴様の百面相に思わず見入ってしまったのでな…」
「……」
思考に直接答えが返ってくるなんて…いつものこと。
「あ、そう」
コイツには後ろ姿しか見えてないハズなのに…なんてツッコんだって、意味ないか。
いろいろ考えてて、その都度浮かべた表情を、逐一見てたってのかよ…ネウロらしいよ。悪趣味だなぁ。
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