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〜有限の…〜 2−01
宿題は事務所で済ませちゃったし、見たいテレビも特にない。ご飯食べたら、リビングに1人でいてもつまらない。
もう、することなんてなくって、あたしは自室に戻って机に向かうけど、何するでもなく…
「はぁ…」
無意識に、長いため息だけが出る。
お母さんがいない夜なんて、これまで何度もあった。
昔だったら、お母さんはいなくても、家にはいつもお父さんがいたんだし。
ネウロと出逢ってからは…
つまり、お父さんがいなくなってからは……
そんな日は決まって事務所に縛られてたんだし。
要するに…あたしは、夜ひとりでいることなんて、ほとんどなかったんだ。
なのに、今はひとりでいる。ネウロの言った通りに、めったにない解放感を満喫してればいいのに、それはとても難しい。
『ねぇ、ネウロ。今日はここに泊まってっていい?』
『だって、お母さん出張で、今夜は誰もいないんだもん』
今日に限って、どうしてあんな甘えたことを言ってしまったのか、あたしは自分でよくわかっている。
言わなきゃならなかったからだ。
言わずにいられなかったからだ。
そんなのは一蹴されちゃって、帰りを促されちゃって、恥ずかしい気持ちになって、頭きただけだった。
今のネウロならそう言うかなってわかってて言ったけれど……
あんなこと言ったの、はじめてだったんだよ。
女の子にあんなこと言わせるなんて…ネウロのヤツ…
いつもは、手を合わせて懇願したって帰そうとはしなかったクセに。
前までは、そういうこと勝手に嗅ぎ付けてたクセに。
ここぞとばかりにあたしを拘束してたクセに。こっちの都合なんか聞く耳もたずに、『謎』がなくても、あったら尚更、あたしを拘束したクセに。
「はぁ……」
また、ため息。
本当に、全く…!
あの朴念仁ってば、いったいなんなんだろ…!
最近のネウロは本当にわかんない。
同じ人間同士だってわかんないことは多い。ましてネウロは人外、“魔人”なんだし、尚更不可解なところが多くても仕方ないんだけど、そこはあたしもちゃんとわかってるんだけど、それにしたって……
表面上は変わってないのよ。
虐待は変わらずにあるもの。けど、どこか手加減してて、どこか優しい。ドSに優しいってヘンだけど、確かにそうなんだ。そして、どうしても取って付けた感じが、する。
強いて、こじつけていえば、微妙な関係になる前に戻っちゃったっていうか…
それもまた、何となくニュアンスが違う。
ネウロは明らかにヘンなんだ。けど、訊くわけにはいかないし、どう訊いたらいいかもわからない。
たぶん、本人もちゃんと気付いてないのかもしれないし。
それでも、あたし達は一緒にいる。
あたしはだから、時々いたたまれなくなって、用事がないなら早く帰りたくなって。
ネウロも強く止めなくなって……
一緒にいることが当たり前…それだけになっちゃうのかな
それだけを理由に、ネウロはこれからもあたしを傍におくのかな
覚悟したのに
覚悟してるのに
そりゃ…少しこわいけど
でも……
あたしは…不安で、不満なんだろう、たぶん。
認めるのも恥ずかしい感情だから、あくまでも…たぶん。
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