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〜有限の…〜 1−03

 知っていれば殊更にからかったに違いないと、弥子もあかねも思ったのだろう。
 事実ネウロは、知らなかったばかりにそう出来ず、惜しいと思っているのだから。だが、それは所詮少しばかりの感情。

 実際はそれ以上に…

 一切知らなかったことを“他者”を通じて知った経緯そのものが、ネウロにはまず口惜しい。あかねよりも長い時間弥子と一緒に居て、尚且つあかねよりずっと近しい距離にいながら。

 あかねはネウロの知らないことを知っていた。2人が2人共に、黙っていた…それは魔人に、少しばかりの腹立たしさ、単純な疎外感を覚えさせたのだ。



『当然ではないですか。女の子なのですから』

 あかねが書き付けたことばが、頭をよぎった。



―そうか、あれは“女”なのであったな…―

 今更ながら思う。

 一番それを認識するは、自分である筈。そうでなければならないという自負は強い。
 …にも関わらず、改めて思い至る。



―アカネが重大事のように書き付けたからには、真実なのだろう。だからこそヤコは我が輩に決して悟られないよう気を払ったのであろうから…―

 理解し、そして不問にしてやっても良いと思う。


 あかねが何故唐突にそのようなことを告げたのか、ネウロには解りかねたが、

―まぁ…アカネのこと、何か思うところでもあるのだろう。杞憂にも及ばんか…―





 そうして、思考は、拗ねた風情で事務所を立ち去った少女へと及ぶ。



『…今日はここに泊まってっていい?』
『だって、お母さん出張で、今夜は誰もいないんだもん』

―他意など感じられない子供のような言い草だった、あれは…
 それは、ヤコは何かあれば…何はなくとも、我が輩を頼るのだという証拠でもあったのだな……―



 仮に子供じみた我が儘であれ何であれ、以前ならば問答無用でこの場所に縛り付けてきた少女を突き放したのは、他ならぬネウロだった。




―何故そうしたか?

 …ヤコが近頃は早々に帰りたがるからだ。
 今更甘えるな…と…

 では何故そうなった?
 ヤコは何故帰りたがるように?


 …我々は、何故…?―



 ネウロは無表情を装いつつも、今は答えの見つからない思考を巡らせ続ける。



 すっかり暗くなった外界。灯り一つ灯さず、パソコンだけが辺りを照らす、外より暗くそして静まりかえった事務所内。
 突然、車の警告音が外から響き我に還り、次いで視界から入る光景に…自身をふと省みたネウロは苦い顔をした。



―……我が輩は何故、今更このようなことを考えるのか……―




 あかねは、そんな魔人を眺めつつ、ゆらゆらと揺れているのみだった……









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