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あかねのひとりごと 05

 あかねには、いやはや…としか、いえません。

 確かに、私もネウロ様も、弥子ちゃんの記憶が戻ることを望んでいましたが、これはなんとも…


 目覚めれば元に戻っているというオチならば良い…とは、ネウロ様が仰ったことでしたが…
 図らずも、仰った通りのオチとなってしまうとは……



 一番お気の毒なのは、何といってもネウロ様でしょう。

 あれだけ弥子ちゃんの態度に戸惑われたり、らしくなく優しく接していらしたりしたのに…
 あれだけ苦心なさって、なんだかんだで、あんなに短い間に甘いときを過ごせる関係を取り戻したのに……

 みんなみんな、忘れられてしまってるなんて……




 ネウロ様は呆れ果てて帰ってしまわれました。

 今日もお仕事を控えておられる弥子ちゃんのお母様は、退院後も、引き続き弥子ちゃんのお世話をネウロ様にお願いするお話があったようなのですが、

『お母様がおいでになりましたし、事務所の仕事が詰まっておりますので、僕はこれで失礼させて頂きます』
 …と。お母様は、それも当然とわかってらっしゃったようでした。引き止めることはなさらずに、
『本当に、弥子がこんなでごめんなさいね、ネウロ君』
 と仰って。

『こんなって何よ!』
 むくれる弥子ちゃんを、お母様とネウロ様のお二人は、何ともいえない眼差しでご覧になっていました…



「ねぇ、あかねちゃん。
 ネウロ…アレ絶対怒ってたよね? 何で怒ってるの?
 てゆーか、あたし何にも覚えてないんだけど…目が覚めていきなり退院なんてゆわれて…
 何か、あったの?」

 お母様が退院の手続きに病室を留守になさっている間、弥子ちゃんはお母様の持ち込まれた大量の食料をかきこみながら、私に話しかけました。


 弥子ちゃんが私を私とちゃんと認識して話しかけてきてくれたのが、すごく嬉しくなりましたが、今はそう喜んでいる場合でもありません。

『弥子ちゃんは、事故に遭ったんだよ』
「うん、それは覚えてる」
『でもね…ごめん弥子ちゃん。私からはそれ以上は何もいえない…』
 私は、携帯のディスプレイにそう打ち込むしかありませんでした。



 私に何が云えるでしょう。

 それに、私の知らないこともあるんです。迂闊なことは云えません。お気の毒なネウロ様の為にも。


「んー…
 ワケわかんないなぁ…」

 サンドイッチを頬張りながら不満そうな顔をする弥子ちゃんは、何といいましょうか……


 無意識に無邪気に無作為に…悪気は全くなく、またもちろん弥子ちゃん自身が悪い訳でもないのに…

 結果的に、ものすごく罪深いコトしちゃってるよなぁ…

 …って、しみじみ思っちゃいます。








 …ところで…
 私って、今はネウロ様の携帯に張り付いていますよね?
 私を置いて帰られたということは、ネウロ様は、ご自分の携帯を置いていかれたということで…

 まさかネウロ様ともあろう方が、そんなうっかりな忘れ物をする訳がないのですが。
 逆に、ワザと置いていかれたのかもしれないと考えると…


 ……やっぱり、素直じゃないなぁ……

 とか、思っちゃいます。ちょっとばかり微笑ましく。








 何か…貴重な経験をした数日間でした。
 悲しかったり、そんな中でも意外な光景を拝見出来て楽しかったり…


 ですが…



 あかねはもう、あんな想いはまっぴらですけれど、ね……








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あきゅろす。
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