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あかねのひとりごと 03
…また、置いてけぼりにされてしまいました。
でもまぁ、弥子ちゃんの診察にネウロ様が付き添われているのだから、仕方ないか…
どこに行くのであっても、ネウロ様は私を置いて行ったような気がされますが……
今日も弥子ちゃんに会えて…
弥子ちゃんは、私にもちゃんと挨拶してくれて
変わらない笑顔を目の当たりに出来て…
私、とっても嬉しかった。
けれど逆に…
多少はやわらいだようですけど、いつまでも他人行儀にされてしまうネウロ様は…
ご本人は決して認めはしないでしょうが、モヤモヤを募らせるだけのネウロ様は…
弥子ちゃんが何故そんな態度なのか、果たしてお気付きになれるのでしょうか?
答えは、とてもとても簡単なことなんです。
昨日、ネウロ様が弥子ちゃんのごはんなどを買いに留守になさっている間に、弥子ちゃんは私にぽそりと言いました。
『ねえ、あかねちゃん
ネウロさんて、ほんとはあんなかんじのひとじゃないような気がするんだ…
自分をかくしてるひとって、ちょっぴりこわいよね』
私は答えようがありませんでしたが、ともかくその言葉で全てわかっちゃいました。
弥子ちゃんの態度は、ネウロ様が猫を被っていらしたことを見抜いていたから…だったんですよね。
弥子ちゃんはどうあっても弥子ちゃんで、ひとを見抜いてしまう本質は、少しも変わっていなかった。
だから、ネウロ様が素に近い言動をなさった時、私は、
『その調子です!!』
ってエールを送ったつもりだったのですけど、やっぱりお気付きになれなかったようで……
けど、ネウロ様が猫を被ってらしたのも、致し方ない成り行きだったのかもしれません。
弥子ちゃんが意識を取り戻して再会なさったときには、弥子ちゃんのお母様がそばにいらした筈なのですから。
素の態度で接することが出来ないうちに…
弥子ちゃんが訝しんで、あんな態度になってしまい、タイミングを失ったまま、何だかんだで今まできてしまったんでしょう。
お気の毒とは思いますが…
ネウロ様がご自分でお気付きにならなければ、どうにもなりません。
何度もそれをネウロ様に伝えたかったのですけどね、実は。
でも一応、私はただ動けるだけってことになってますし。意志の疎通が出来ることまでは、弥子ちゃんは知らないんでしょうし…?
それにしても、遅いなぁ…
「弥子、いい子にしてたー?」
あ、どなたかが病室にいらっしゃいました。
口調からすると、弥子ちゃんのお母様でしょうか?
私、弥子ちゃんのお母様を拝見したことがないんですよね。
その方にバレないように、私は髪束をそっとずらしました。
弥子ちゃんと違って黒髪ではありますが、弥子ちゃんによく似た方です。
…弥子ちゃんが大人になったら、こんな感じかなって、一瞬思いました。
「あれ、ネウロ君もいないのかぁ。検査に行っちゃってるのかな?」
声も弥子ちゃんによく似ていらっしゃいます。ちょっと低いかな?
「仕方ないなぁ…」
慌ただしく出て行かれます。
口調までも、弥子ちゃんにそっくりな方でした。
というか、弥子ちゃんがこの方に似ているんですね。
………
また、ひとりにされてしまいました。
弥子ちゃん達、いつまでも帰ってこないなぁ…
退屈だなぁ……
…なんて考えていたら…
弥子ちゃんのお母様が勢いよく戻ってこられました。
その勢いが尋常でないように感じられて、私、びっくりしてしまいました。
お母様は、それはもう、真っ赤なお顔をなさって、息まで荒いように思われて……
……何か、あったのでしょうか…?
[*前P]
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