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あかねのひとりごと 01

「アカネ」

 弥子ちゃんの寝顔を眺め続ける私を、ネウロ様が唐突に、けれど静かに呼びました。

「我が輩は少々寝る。
 アカネはヤコの顔を見ていたいようなので、そこのサイドボードに置いてやるが、それで構わんか?」
 そう、ネウロ様は仰います。

『はい』
 …という返事代わりに、私は揺れてみせました。



 私のくっついた携帯をサイドボードに静かに置いて、ネウロ様はパイプ椅子を片手で引き寄せ座られ、目を閉じてすぐに眠ってしまわれ……


 ネウロ様は、ゆうべ、いつものように天井に寝転んで、休んでいらっしゃった筈なのですが……

 実は、眠れてなんていなかった…ということ、なのでしょうか?

 そうなのでしょう、ね。きっと…
 すごく納得出来ることではあります、が。



 ネウロ様ったら、眠る弥子ちゃんを見ていて、つられてご自分も眠くなってしまわれたのでしょうか?

 それとも、弥子ちゃんの傍で眠りたかったのかしら?

 どっちも…かもしれませんよね、ネウロ様のことですから。



 ねえ、弥子ちゃん?


 弥子ちゃんはほんとうに何もかも…

 私のことも、ネウロ様のことも、忘れてしまったの…?



 弥子ちゃんのお母様のお話は聞いていました。

 お友達も戸惑ったって、仰ってました。

 だから…本当のこと、なんでしょう。


 けれど、私はまだ信じられない。信じたくない。



 だって…

 私はまだ、弥子ちゃんの寝顔しか見ていないのだもの。




 弥子ちゃんのことが大好きだけど、臍曲がりで普段ドSな意地悪ばっかりするネウロ様を忘れても、仕方ないかもしれないけど…
 そんなことをいったらお叱りを被ってしまうけれど…

 でも…


 あんなに仲良くしてた私のことまで忘れてしまうなんて、信じたくないんです。





『あかねちゃんの髪はホントにキレイだよねー。あたしなんかクセっ毛で色素薄いから、羨ましすぎるよ』



 ねえ、弥子ちゃん?


 私は、ここにいるんだよ。

 弥子ちゃんが、
 丁寧に綺麗にトリートメントしてくれたり、
 遊びながら凝った編み方に挑戦してくれたり、

 きょうだいがいないから、私とお喋りするのが楽しいって…

 弥子ちゃんが、大好きだよって言ってくれた、私、が……




 早く早く目を覚まして、私を見て、

「あかねちゃん、おはよう」

 そう呼んで欲しい。そう言って欲しい。



『目覚めれば元に戻っているというオチならばいいと?
 それならば、良いがな』

 ネウロ様の仰った、そんなオチになってくれても、私は全然構わないんだから……









[*前P]

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