[携帯モード] [URL送信]

main storyU
〜センタク〜 おまけ

 女は、魔人に渡された掌の物を眺めながら微笑んでいる。

 …と…


「ユーコさーん!
 あー、やっと見つけた!

 全くもー、人を勝手に連れ出してお使いさせといて、自分が迷子になってるって、一体何々すか!!」

 一見して高校生とわかる少年が、女…『ユーコ』を見つけ駆け寄り、そしてまくしたててから、漸く息をつく。

「あらぁワタヌキ!
 お使いご苦労様。
 何でそんなに息を切らしてるの?」
「ユーコさんがいきなり居なくなるからでしょう!」
 『ユーコ』の素っ頓狂な言葉に『ワタヌキ』と呼ばれた少年は、恨みがましく言う。



「あはは!」
「そこ、笑うトコじゃないっすよ」
「ちょっとね、気になったヒト達を見つけちゃってね」

「…へぇ…ユーコさんが気になった人…

 …もしかして、ユーコさんがこの街に来た一番の目的って、それっすか?」
「…さあね…
 でも、みんな済んだから、もういいのよ。
 それで、ワタヌキは、目的のモノは手に入ったの?」
 『ユーコ』が誤魔化したことに、若干の不満を覚えたが、少年は、
「はいはい、ちゃんと買えたっすよ。危なかったっすよ。限定品の上に、残りわずかでしたから」
「あー!これよこれ!!
 『王美屋』のフルーツケーキ…!!
 ワタヌキの作るデザートも美味しいし素敵だけど、たまには有名スウィーツも良いわよね」
 『ユーコ』は、差し出されたケーキの箱をひったくり、頬ずりをする。
 少年は呆れ、

「…その為に、ぐにゃぐにゃの『道』を通らされて、知らない街で迷子のユーコさんを捜すハメに…
 気紛れなユーコさんの行動にいちいち振り回されてるおれの気持ちはいったいいつ報われるんすか?」

 不満を垂れ流す少年の喚きを『ユーコ』は全て聞き流し、
「まあまあ。
 …さて、ワタヌキ!
 喜びなさい、臨時収入が入ったわよ…!!」
 笑いながら、魔人から受け取った、もう片方の物を少年の眼前に見せ付ける。

 訝しみ、覗き込む少年。

「…?
 ……!!
 て、これ、ダイヤ!?
 ホンモノっすか…?」

 慌てふためく少年に、『ユーコ』は、
「もちのろんよ!
 これで、今夜は…いや、しばらくはドンペリ飲み放題よ…!ドンペリのドンペリ割りよ…!
 さぁワタヌキ、今すぐ換金に行きましょう!」

 うきうきと歩き出す。


「そんなもん貰って…ユーコさん、いったい誰と会ってたってゆーんすか!?」

 慌てて『ユーコ』の後を追いながら、少年は聞く。


 『ユーコ』は、宝石を無防備に投げ上げ、掌で受け止めながら、
「この街で一番の有名人よ」
 少年を振り返り、言う。


「…へぇ…
 ユーコさんもそーいう人に会いたいと思うモンなんすね」

「…そう…
 あちらの世界でも、とても有名な、素敵な…いつかは逢いたかった人達よ」

「…ふぅん…
 ユーコさんほどの人にそー思わせる人達なんすね…」
 訳が解らないながらも、少年は感嘆の呟きを漏らしつつ、女に付いてゆく。


「おれも、会いたかったかも」
 ふと、漏らされた少年のひとことに、『ユーコ』は、


「…縁があれば、いつかは逢える…かもね」

 再び振り返り、艶に微笑みつつ、囁いた……






おまけ:終

[*前P][次P#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!