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〜センタク〜 05
女の語りを聞きながら、ネウロは鼻を鳴らし懐を探り、落とす。
「そうまで言うならば…これもくれてやる…」
掌に落ちたそれを、女は眺め微笑む。
「…ありがとう」
踵を返し、女の元を去ろうとしたネウロは、ふと振り返る。
「…どうでも良いことだが…
我が輩、貴様にはヤコと同じ匂いを感じた。
同じ『食欲馬鹿』の匂いが…な……」
嘲るような言い種だったが、女は特に気にかけず、
「ふふ……
そうね、仰る通りよ。流石だわ。
……そういえば、あたしが、あの『女子高生名探偵』に興味を持ったのは、並外れた食欲の女の子…って噂を耳にしたからだったわね……」
笑みを交えつつの女の返答に、
「…ふ…」
ネウロも短く笑う。
「……また『縁』でもあれば、あの食欲馬鹿に付き合ってやるがいい。
アレも、さぞかし喜ぶであろう」
言いながら、今度は振り返りもせずにその場を歩き去った。
「……喜んで」
女は瞳を細めて、囁く……
「ヤコ」
退屈そうにたこ焼きを頬張る弥子の斜後ろに立ち、ネウロは呼びかけた。
弥子の周りには、あれからさほどの時間が経っている訳でもなかったのにも関わらず、様々な食べ物の空き箱や袋が散乱している。
それらを一瞥し、微笑んだネウロは、
「…それほどに退屈していたのか」
弥子の頭に手を置き、少々の力を込める。
「痛たた…っ!!
そんなんじゃないもん!」
「そうか。
…今日は生憎、『謎』は見つかりそうもない。『謎』の生まれそうな気配のひとつも感じんのだからな。事務所に戻るとするぞ。
…そこのゴミを5秒以内に何とかしろ」
「うん、ムリだから。
そっか、『謎』なさげなんだね…残念」
弥子が周囲をまとめながらネウロを見上げると、ネウロは視線を返しつつ、
「喰えぬ謎ならあったがな」
独り言めかして、呟く。
「…うん、不思議なひとだったよね、あの女の人…」
弥子も、思い返すように呟いた。
「……」
「あんまりお話はしなかったけど、そーゆー雰囲気をひしひしと感じたよ。
言ってることばにも、何だか重み…威厳っていうの?…そーゆーのがあって。
…そもそも、出てきた時から不思議だったしね。
でも…言ってること、ちょっとだけ間違ってた」
「ほう…」
「『この世ならぬ出逢いをし
この世ならぬ経験をする』
…てさ…
あれ、未来形なんかじゃない…よね…」
「……」
「フツーなら絶対出来ない経験なんて、これまでもいっぱいしちゃってるよね、あたし。もちろん、これからも…
『この世ならぬ出逢い』は、とっくにしちゃってるし…」
「………」
弥子の呟きに、ネウロは暫し言葉を失ったが、
「…占いなぞ、くだらん」
辛うじて言い、歩き出す。
「…ま、ネウロなら、そーだよねー」
2人は、しばらく黙って歩いていたが…
「…我が輩にも、未来のひとつやふたつ、予知出来るぞ」
「…何よ急に」
突然言い出すネウロに、弥子は面食らう。
ネウロはその頭を掴み引き寄せた。
「…貴様は、いずれ…近いうちに『異形の者』に喰われる相が出ている…」
小さく、そして低く囁かれたことばに、弥子は顔を赤くし、瞳を丸くもし…囁いた。
「それって
予知とか占いじゃなくって…
予告っていうんだよ……」
了
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