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〜センタク〜 03

「桂木弥子…さん…
 貴女とお話出来て嬉しかったわ。
 噂に違わず、強きこころを持ち、今尚育て進化させているお嬢さん。

 あたしももっとお話したかったのだけれど…

 …申し訳ないけれど、ここからは助手さんとの『対価』の交渉になるので、お嬢さんは席をお外し下さいな」

「はぁ……」

 夢見心地の弥子の返答に、ネウロは、
「…そういうことですから、先生はそこらの店で美味しいものを存分に堪能していらして下さい」
 女の言葉を請け、弥子を、この場から離れるよう促す。


「う…ん…わかったよ……

 あたし、近くにいるからね!
 終わったらちゃんと迎えにきてよ!勝手に事務所に帰ったりしないでよね!」


「言うまでもないでしょう」
 『助手』ネウロは、そう請け負い、躊躇いがちに場を離れつつある弥子に笑いかけた。

 弥子とネウロの応酬を耳にしつつ、女もまた笑う。


「またお逢いしたいものだわ。
 …桂木弥子…弥子ちゃん。
 ウチのバイトとも気が合いそうだし…ね」


 弥子は、占い師の女とネウロのことばにしばし躊躇し、それでも、
「…じゃあ、ネウロ…また後でね…」
 そう言い、不思議な占い師の元から離れる。









「…面白くなさそうなお顔ね。
 名探偵の助手さん。

 …脳噛ネウロさん…」


 不思議に妖艶な女の言葉を聞いているのかいないのか、ネウロは、

「…貴様は何者だ…」

 はじめから表向きの口調を排除した問いかけを。


「そんなトゲトゲしくしなくてもよくなくて?

 言ったでしょう?これも縁なのだと。
 あたしはそれに抗わず行動しただけのことよ」
「答えになっとらん」

 女は、どこからか煙管を取り出し、如何にも美味しそうに煙を吐いた。


「…貴方…
 まさか、この世界に生きる異形の者が、ご自分だけ…だなんて思っていないわよね?

 …あたしはそのような者。
 普段は人間そのもののように過ごしているけれどね。

 貴方が『魔人』であるなら…あたしは『魔女』とでもいえましょうか?
 実際、そうとも呼ばれているけれど」

「………」

「貴方、あたしがあの娘に告げたことを聞いて、面白くなさそうにしてたわね。
 それは何故?

 占いなんかで未来を縛るなんて、くだらないと思っているから?」

「…その通りだが」

「けれど貴方は、あの娘自身の今を、未来をも縛りたいと思っているのよね?
 …誰が何と言おうと」

「………」

「わざわざ未来形に…まだ起きていないことのようにウラナったのはね…

 あたしの言ったことが何なのか…を決めて納得するのは、あの娘自身だからよ」

「………」

「…それが、既に現実になっている貴方との出逢いだと、あの娘が思うのならば、貴方にとってそれで良し。
 そうでなくとも…貴方がこれから、あの娘にそう思わせるようにしてゆけば良いだけの話じゃなくて?

 どのみち、あの娘を手離すつもりがないのなら…ね。

 それに、あの娘も言っていたじゃないの。
 『もう、あったかもしれないんですね』
 って…

 あの娘はわかっているのよ。ちゃんとね」



「…貴様は…占い師などではないな…」

「そう…あたしは、ただ視えるだけ。
 視えるモノを過不足なく、伝えるべき…伝えたい相手に告げるだけ。
 たまたまこの町に来て、貴方がたに逢った…
 ならば、あたしは伝えるべきことがあるのだと、その直感に従っただけのこと」

「…それにしては、大したことも言わぬのだな」

 女は、笑った。





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