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〜有限の…〜 2−14

「言い様もあればこそだな」
「……」
「我が輩のあらゆる耐性は、地上の常識範囲程度の物理的現象や数値には左右されん。どうということもなく、データとして把握するのみ。
 鈍感…か。全く以て、貴様の言う通りだ」
「……」

 あたしの言うことを、ちゃんと認めるなんて珍しい…って言いたくても、意識が…
 ネウロが触れてる、手や胸、そして背中に分散されて…
 言葉にならない。


「だが、感覚的な『熱』に対しては違うと思うのだが」

 違うって…ビンカンだと自負してるってことだろうか…
 感覚的な『熱』って、何だっけ。また何か思い出しそうなんだけど…わからない。


 思考はぐるぐる混乱するばかり。
 ネウロがしゃべる度、肌に吐息がかかる。それすらも刺激になってしまうから。



「…そして我が輩は…それには弱い。それだけのこと」
 肩に揺れる髪の先が触れる。それもまた……

「…よわい…それだけ…て…
 ………ぁ…ん…!」


 唐突に、胸を覆うようにかすかに触れていた手のひらに力がこもって、握りしめられた。


 からだの中心を走り抜けるような感覚は、久しぶりのこと。
 いつ以来…だっけ……

 笑った気配を感じた。同時に、ネウロが手首をまとめて掴んでいた手を離す。

 アゴに離した手をかけて、上向かせて…

 あたしは当たり前のように、瞳を閉じる。


 瞬間。頭の芯を支配する痺れが全身を貫くような錯覚を覚えた。
 漏れ出る声は全て呑み込まれて…



 キスも…久しぶり…

 してもらってから、実はずっとそうして欲しかった自分に気付くけれど、そんなこと、言ってなんて、あげない。
 ただ…反応に出てしまって、気付かれるのは構わない。
 …そう、思う…

 現にあたしは、ずっと触れてこなかった…触れてもらえなかったそれを、求めてしまう。すがるように、腕に指を引っかけて。正面を向いていたら、あたしはきっと自分からネウロを抱きしめてた。


 ネウロの唇は冷たいって記憶してた。いつでも、触れる最初はそうだった。あたしの体温が移るのか、だんだんあったかくなってった、ような…
 でも今は、はじめからあったかい。

 あったかいって、妖しいもんだな…

 ふと思って…ようやく思い出した。


 いつだったか…

『一億と貴様の平熱で限界』

 ネウロはそう言ってた。
 ことばの意味が、やっと解った気がする。


 ネウロは…ビンカンなんだ。あたしの体温…反応に対しては……



 後ろからのキスは、鼓動が早まってるせいか、そして体温が上がってるせいか…少し苦しい。けれど、やめてほしいなんて思えなかった。

 唇が、ほっぺた、顎を伝い下りて、戻って耳朶にたどり着く。軽く食まれて…
 同時にあたしのからだを這う指が、行きつ戻りつしながら、ゆっくりと下りてく。

 それだけなのに…からだの震えを隠せない。
 声はかろうじて抑えてるけれど…時間の問題。自分でよくわかる。

 久しぶりの感覚と、はじめてで戸惑う程に強い、でも決してイヤじゃない感覚。分散されたそれに、あたしは揺さぶられて翻弄される。

 どこをどのように…ごくごく軽く触れられただけでも…なんて。恥ずかしいことだろうか。
 あたしには…今のあたしには…わからないよ…








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