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〜有限の…〜 2−13
ふと、疑問がわいてくる。
「ねー。ネウロにとってさ、お風呂のお湯って、冷たく感じたりしないの?」
「…何だ急に」
「だってさー、あんた、源泉を満喫するとか前に言ってたし、そもそも一億度に耐えられるって…
差、すごすぎじゃん?」
「…だから貴様はミジンコウジムシワラジムシだと常々我が輩は言っているのだ」
「なによぅ!」
ネウロは、あたしの頭をアゴでぐりぐりするのを止めないまま、
「確かに我が輩、一億度余りの灼熱にも耐えられるがな。
…今はどうだか知らんが…
ともかく、だからといって、地上における温度を冷たいと感ずることなどない。
そのように安直な発想しか出来ん貴様が、いたく情けないぞ我が輩は」
「白々しい!」
「…耐性と感覚は違うだろうに」
ネウロはため息混じりにそう言った。同時に、回した腕をのばして、手首を両方とも取る。
脈から、鼓動の早さがバレちゃうかもしれない。ネウロならもしかして、背中とベスト越しでも、心臓の鼓動を、早さを、とっくに感じ取ってるのかもしれないけど…
「そんな言われ方されても…そもそも人間は、あんたみたくケタ違いに強靭じゃないから、想像もつかないことじゃん。わかんない方がフツーだし!」
「…ふ」
頭の上で短く笑ったネウロは、ずっとあたしの手をもて遊んでた。やんわり握ったり、指先で手のひらや甲を辿ったり。
「…で? 沸騰寸前の源泉を満喫するネウロ。ごくフツーの温度でしかないここのお風呂は、いかがなものなのでしょーか?」
微妙な触れられ方にドギマギしながら、あたしは訊く。
「…悪くはない」
「あ、そう。それは良かった」
「最初からそう訊けば良いものを」
「………」
湯加減はいかがですか?って訊けば良かったのかよ。恥ずかしくて出来るか、そんなん。
ああ、それにしても…
今のあたし、手のひらも甲も指もきっと、熱くなっちゃってる。革手袋越しでもカンタンにバレちゃう、それほどに。
顔も赤いんだろうな。からだ全体、体温が上がっちゃって……
「…あ」
「どうした?」
…思わず漏らしてしまった声は、絶えず手を弄ばれる感覚から。
それと…
何かを思い出しかけたから。何を思い出しかけたのか、すぐに忘れてしまったけれど。
「…ううん…なんでも、ないよ」
「そうか?」
「…今思ったんだけど、ネウロってさ、そこまですごい耐熱体質だってことは…言い方を変えれば、あんたはドンカン。
…とも、いえなくない?」
「…ほう…?」
場の流れで閃いた結論めいたことに、言ってからその通りなんじゃないかと思う。あたしはついつい言葉に力を込めてしまう。
「うん、ドンカンだよ、あんたは」
「何やらよくわからんが、失敬なことを言われている気がするな…」
「失敬なんじゃなくて、真実だもん。あんたは、身も心もドンカンなんだから」
「…耐性と感覚は違うと言ったばかりだというのに…全く貴様は」
「それ意味わかんないし…
…あ!」
出し抜けに胸に触れられた。
ううん…
ネウロの大きな手のひらが、あたしのささやかなそこをおおっているだけ。
なのに…あたしは、驚いただけじゃない一声をあげてしまう。
反射的に跳ね上がりかけた手は、ネウロが抜かりなく両手を掴んでいたせいで、ピクリとも動かせなかった…
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