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〜有限の…〜 2−11

 スポンジと泡が隔ててるとはいっても…

 あたしの肌の感触は、ネウロにとって「悪くない」…のかな。

 あたしは心地よくて、でも恥ずかしくて…いろんな感情がひしめいてて…
 それでもやっぱり、こうしてるときは良いと思う。


 コイツは、ネウロは…どうなんだろ。


 「悪くない」と、いいなぁ……





「…これ以上は届かんな…」
 しばらくの無言の後、ネウロがまた、短い呟きを漏らす。
 さすがのネウロでも、背中からじゃ、脚から先は、無理みたい。

「あ、じゃー、こっから先は自分でやるから、もういいよ。ありがと」
 首だけ向けて、あたしはそう言う。

「もういいのか?」
「え。もうって…」


 だってさ…
 これ以上はちょっと…

 正面向かなきゃならないんだろうけど、やっぱりネウロの方は向けない。ネウロを直視なんか、あたし出来ないよ。

 もう、ドキドキが聞こえちゃうんじゃないかって、くらい、なんだから……


 なぁんて、もぞもぞしてたら、首根っこを掴まれて立ち上がらされた。


 よく、滑らないなぁ…


 そっ、か…立てば済むんだっけ…

 それもそれで、落ち着かない。だいいち、後ろ姿とはいっても、泡が所々隠してるっていっても…
 からだのライン…凹凸の乏しいとことかさ…見えちゃってるんだから。座ってた時よりも、ずっと。


 ちらっと後ろを見たら、ネウロは片膝をついていた。その、らしくない姿勢もまた…

 あたしにかしずくネウロなんて、まずありえない。あたしが背中向けてるから成立する光景なんだろうか…?


 前には回りこまない。決してそうしようとはしない。本当にデリケートな部分には、触れない。太股で止まるスポンジ…手の動き。

 それ以外のところは、とてもとても丁寧に。爪先までも。

 それは有り難いことには違いないんだけど。
 からだの末端は感じやすいんだって、ネウロは知らないのかな…
 あたしは叶絵から聞いたんだけど。今はじめて、それがホントだって、知ったんだけど。


 肌にさわさわ触れる髪の毛の感触が、心地いいのと同じくらいに…物足りない。とてもとても、もどかしい。

 ネウロは…自分で言ってた通りに、『紳士』的、なんだろう。それが、あたしには…



 あかねちゃんが時折、ネウロはヘタレだって云ってたことを、ふと思い出す。
 ネウロがヘタレ…そんなふうに思ったことなんて、あたしはなかった。あかねちゃんがどうしてそんなこと云うのか…そう思ってるのかが、わからなかった。

 けど、今は何だかわかる気がする。

 いっときでもそんなふうにネウロのこと考えたなんてバレたら、ヒドいめにあいそうだけど。


 何を考えているのか。洗い終えたらしいネウロが、無言のまま立ち上がって、何かもぞもぞしている。
 と、シャワーのお湯を首筋に当てられた。少しぬるいお湯が、からだ中の泡をあっという間に流していく。
 事務的とも思えるような手付きは、鼓動を少しだけ鎮めて…




 …物足りないと思っても、じゃあどうして欲しいのか。あたしは、具体的にはわからない。
 ただ、頭のどこかがずっとしびれてた。余韻で、少し呆然としてる。そんな自分がわかるだけ。






 …あたしには、覚悟があるんだろうか。それとも、やっぱり、まだないんだろうか…?


 それもまた、わからない。でも、やっぱり…イヤじゃない。こんなときは……







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あきゅろす。
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