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〜有限の…〜 2−09
「うひゃあっ!」
いきなり触れられた感触に、思わずヘンな声を上げてしまう。
…それが、手を取られて、手首ごと撫で付けられただけだったとしたって…だよ。
ネウロの手が…革手袋が泡だらけになってるんだから。
直にあたしを洗おうってつもりだったのがわかったんだから…
びっくりしないほうが、ヘン、だよね。
だよね…!
驚き過ぎて上がってしまったカン高い声に、あたしの手を撫で回して、今にも腕を伝いそうにしてた革手袋の動きが、止まる。
泡が腕を伝い落ちる感触に…ついつい、ドキドキしてしまう……
これは…コイツがムダに凝り性だから? それとも、カンジンなところは無知だから?
それによっては、やってるコトに含む意図が、全く違っちゃうんだけど……
「…本当に貴様は…」
「なによ」
「すること成すことにいちいち逐一奇声を上げ、我が輩を煩わせなければ気が済まんのか貴様は?
建設的に物事が考えられないと自覚しながらそれか? だから貴様はワラジムシだというのがわからんのか」
一気に言われる。さすがにムッとしたらしい。
「だ…って…」
「何だ」
「…だって! 仕方ないじゃん!
身体洗うのはいいとして…手で洗うってのはどーかと思うのよさすがに! どんだけマニアックなのよ、あんたって?…って話になるよ!?
そこにちゃんとスポンジあるでしょ? 身体ってのは、それで洗うもんなの! しかも、あんたが泡立ててるソレ、シャンプーだし! 身体洗うものじゃないし!」
あたしも負けずに一気に言ってやると…
ネウロは、泡だらけの片手を眺めながら、納得したかのような顔で、笑う。
「…あぁ、どうりで覚えのある匂いだと…」
「……そこで気付け!」
覚えがあるのは当然。あかねちゃんに使っているのとお揃いなんだから。
「ボディソープはそっちだからねっ」
肩越しに指差すと、鼻を鳴らされた。
「何だ。同じような容器ではないか。どうせ、シャンプーもボディソープとやらも、貴様にとっては大差ないだろうに、何故そのように面倒臭い……」
「失礼な! デリケートな女の子のケアにケチつけんな!」
「…フン」
後ろをチラチラ見ながらの応酬は、何だか子供同士のやりとりみたいだよなぁって、ふと思えてくる。
そしたら、何だか笑えてきちゃった。
あたしはドギマギしてるばかり。だけど、ネウロに到っては、基本的なことがまるでわかってない。
こうなると、もう、どっちもどっち。
ただ、お風呂に入るだけなのに、こんなに珍妙なことばかりで騒がしいなんて、ある意味、子供の遊びの延長みたいだ……
あーだこーだ、ヘンなこと考えてても、意味がないよね…なぁんて思えてくる。
そんなこんなのやりとりの後、なんだかんだいいつつも、ネウロはスポンジにボディソープをつけて泡立てて、腕から背中を洗い始める。
肩や首筋も、念入りに。
力加減が、絶妙だなぁ……
恥ずかしくて、くすぐったくて…気持ち良くて……
思わず、うっとりと目を閉じてしまう。
ちょっと…ほんのちょっとだけ。
成り行きに…
そして、あの頃の『あたし』に感謝しても、いいかなぁ…なんて、思っちゃったりも、する。
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