[携帯モード] [URL送信]

main storyU
〜有限の…〜 2−08

 着たいなら、着せて欲しいなら…
 これからのことをクリアしなければ、それは実現しないようで。
 成り行きとはいえ、何となく本末転倒のような気が、しなくもないけれど…




 だけど、それにしても。

 本当、ネコみたいだ、あたしってば。
 脇から抱えられて、ぶら下がって…


 ううん。それだけじゃ、なくて。


 放っておかれて、そ知らぬフリをしながら実はかまってほしいってスネて、そして何かを期待してる…今までのあたしも今のあたしも、例えるなら、やっぱりネコ。
 ネウロも、うまく例えるよな。

 もちろんネウロはあたしの“ご主人様”なんかじゃないんだけどさ。それでも。





 ネウロが浴室の扉を押すと、きしんだ音が少し立った。途端に、熱く湿った空気が顔にかかる。
 顔が熱いのは…それのせいだけじゃ、きっとないけれど。

 ネウロは、履いたままの靴のつま先でイスをツイッと滑らせて、そこにあたしを座らせる。
 何となく体を縮こまらせてしまう。おずおず見上げたら、手桶を持ったネウロが首をかしげていた。
 あー、掛け湯しようとしてるのかな。もしかして…

 ぼんやり考えてたら、片手がのびてきて、タオルの合わせ目に長い指が引っかかった。

「え…ちょっと…!」
 身をよじって振りほどくと、タオルに引っかけられた指はあっさりと離れて、ネウロが、心底不思議そうな…というか、不本意そうな顔をする。

「どういうつもりだ?」
 って…

「どういう…って…」
 そんなこと訊かれても…

「良心はここまでだが」
 ちょっとの間の後の低い呟きが、狭い浴室に響く。呆れてるのかスネてるのかどっちか…そんなこと、わからない。
 それどころじゃ、ない…

「わ…かってるよ…」

 わかってる…そりゃ、タオル巻いたままじゃ、掛け湯はおろか、体なんか洗えないけどさ…

 だけど…だから…!
 真っ正面からはムリ! まだ…ムリなんだってば!

 ため息を吐いて、ネウロに背中を向ける。



 意を決して、タオルを、外す。

 自分から。
 わざと、ゆっくりタオルが体を滑るように。
 浴衣とか着物を脱ぐ後ろ姿のイメージ…みたいに。



「…ほう…自分から…とはな…」
「………」

 ワザワザそこ、ツッコむな…!


 ワザワザ、そんな色っぽい仕草…
 …かどうかは、自分じゃわからないけどさ…
 ともかく。そうした、あたしの精一杯の何かを感じとりなさいよ。
 せめて、それくらいは!!

 顔がもっと熱くなっちゃって、もう、呆然とするしかない。
 最後の砦よろしく、ぎゅうっと握りしめて抱きしめてたタオルは、背後からさっと取り上げられて、あたしはとっさに自分を抱きしめる。
 タオルは、適当な所に引っかけられたみたいだけど…
 顔、上げらんないから、あたしにはわからない。


「往生際が悪いと思ったものだったが…」

 ご機嫌な声音。
 もうもうもう、恥ずかしい…!




 いきなり、頭上からお湯が落ちてきた。しかも、立て続けに。


「…ぷぁあ…っ…!」
 すっかり濡れネズミになってしまって。流れるお湯のせいで目を開けてられない。
 間髪いれずに、何だか馴染みある香りが。頭を振って、目をこすって振り返ろうと…したら。







[*前P][次P#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!